IoT

 IoT(アイオーティ)とは「Internet of Things」のことです。「Things」とは「物」のことです。つまり、「物のインターネット」という意味になります。従来は主としてパソコンやサーバ、プリンタ等のIT関連機器が接続していたインターネットにそれ以外の「モノ」が接続します。

 テレビやデジタルカメラ、デジタルオーディオプレーヤー、HDレコーダー等のデジタル情報家電がインターネット接続するという流れは既に始まっています。

 インターネットにはパソコンやスマートフォン、タブレットなどの情報端末やサーバなどが接続されるだけでなく、機械類やその他のモノが接続されます。

 様々なモノ、機械、人間の行動や自然現象は膨大や情報を生成していますが、これらの情報を収集し、分析することができれば、様々な問題が解決できると期待されています。モノにセンサーと通信機能を付けて、インターネットに接続し、サーバ上にデータを蓄積し、ビックデータを人工知能で解析し、分析結果をモノに、あるいは人にフィードバックします。これがIoTの基本です。





現在のIoT市場と予測
  ≪ユビキタス社会の次に来るもの≫

 今後数年間で巨大市場となることが予想されています。既に大きな市場になりつつあるのが「ハードウェア」と「コネクティビティ」の分野です。製造業では、何年も前から、様々な組込み系の産業機械の稼働状況を監視するような利用形態が数多く存在しています。例えば、産業機械の状態をセンシングしたり、産業機械の異常を知らせるなどの使い方がされています。

 この状況にネットワークやクラウドといった要素が加わってくると、「ソフトウェア」や「サービス」といった分野にもIoTがひろがってきます。モノにつけられたセンサーによって集められた情報が、モノの通信機能によって、クラウドに集積され、ビッグデータとなり、これをAIを使って分析し、モノや人にフィードバックできれば、技術障壁、コスト障壁を大幅に軽減できるかもしれません。また、機器の故障を分析するソフトウエアと連携することで、機器の故障を予測し、故障が起こる前に取り換えあるいは修理が可能となります。コストの削減につながるかも知れません。更に様々な分野の企業を連携することで、様々な課題が解決されることが期待されています。

 IoTを使った例をいくつか挙げてみます。

●医療分野でのIoT
 着用型のウェアラブルデバイスによって健康状態の記録/管理を、データベースに保存し、医師と共有することで、健康管理(運動や食事制限など)に役立てることができます。病気の予測と、効果的な治療も可能となります。また健康状態が悪化した場合には、アラートを出すこともできます。

●農業におけるIoT
 ハウス栽培での利用が考えられます。センサーで読み取った日射量や土壌状況で、水や肥料の量や与えるタイミングなどを計って、効率的な農業経営に役立てることができます。従事者の高齢化/不足が進み、先行きが心配される農業では、IoTの重要性がますます高まっていくことが予想されます。

●交通機関でのIoT
 バスは渋滞によっては時間通りには運行できないことがあります。道路の渋滞状況や、停留所の状況などをサーバに集めて、分析し、分析結果をWebサイトや、停留所のQRコードなどから読み取ることで、バスが何分後に到着するかリアルタイムで知ることができます。

●自動車分野でのIoT
 車内のセンサーやデバイスをインターネットに接続し、得られたデータを利用することでパーソナルな運転を適性化するとともに、クラウドのデータベースとして活用すれば、天候、渋滞などの情報を元にして、様々な情報サービス(例えば、バスの遅延情報サービスなど)が可能となります。また、データを元にして故障を予測し、実際に故障が発生する前に修理をすることもできるようになります。

●介護分野でのIoT
 スマートロックによって、鍵の開け閉めを監視し、高齢者の「外出状況」や「回数」を把握することができます。夜間に鍵が開いたら「介護者」に連絡するなどの利用形態が考えられます。

●工場分野でのIoT
 作業工程をIoTで分析することで、作業工程を効率化することができます(IoTによって作業工程が3分の2になりコストが削減できたなどの例もあります)。

●家庭や建物でのIoT
 電子錠やセキュリティカメラ、オーディ・ビジュアル機器、照明、カーテン、シャッター、エアコン、床暖房などの電子機器をインターネットにつないで制御するとともに、クラウドのデータ解析の結果をもとにして、エアコンや、窓の開閉、換気、床暖房の制御などを行うことができます。

 ユビキタス社会においては、法人/政府/個人などの様々なユーザがどこでも、ネットワーク環境を利用できるという社会が想定されていました。ユビキタス社会は、インターネットやスマートフォンなどを使って、人間同士がいつでもどこでもつながる、つまり人間同士のコミュニケーションを助けるものでしたが、IoTはモノ同士がつながるということです。センサーと通信機能を持ったモノが、オープンに連携して、その連携によって人や社会を助けることが期待されています。

 ネット経由のリモートコントロールは、今でもメーカが提供するアプリを使えばできます。しかし、今後は人間同士がTCP/IPというオープンなプロトコルを使うことで、誰とでも通信ができたように、モノ同士もオープンな仕様を介して、通信しあうことが予測されます。通信の約束さえ守っていれば、A社製の製品とB社製の製品がオープンに会話をすることができます。A社と、B社が製品の企画段階から、いろいろ相談して、このように通信をしましょうと約束し、それに合わせて製品を作るという必要はありません。全く、規格等で話し合わなくても、オープンな仕様に添って製品を作れば、その製品同士は問題なく通信をすることができるようになります。そして、モノが集めたデータは、クラウドに集められ、公開され、誰でも利用できます。

 データは莫大な量になりますので、分析にはAIやディープラーニングなどの手法が必要となります。これによって、モノの売り方から、研究開発の仕方、流通の仕方などのあらゆるものに影響を与えていくことになると考えられます。

 で、様々な「モノ」って何なの?「で、何ができるの?」と聞いてはいけません。何でもいいのです。モノとは何かと定義しない方がいいと思います。定義すると、可能性を限定してしまいます。とにかく、センサーと通信機能を付けて、つなぐだけです。何ができるかを人より先に考え出した人が勝ちとなる世界が始ろうとしています。確実に新しい節目の時代が始まったと言っていいと思います。



IoTとセキュリティ

 センサーやデバイスといった「モノ」は常時ネットワークに接続され、データを収集し、フィードバックを受けることになりますので、従来からネットワークに接続されていた情報機器と同様のリスクを負うことになります。

 一般的にIoTのデバイスで利用されるCPUやメモリ、消費電力などのリソースは非常に容量が限られていて、暗号化処理などが困難です。また、IoTデバイスはデバイス数が数千から数万にもなることが予想され、そのような莫大な数のデバイスに強固なセキュリティ機能を実装しようとなると、莫大な費用が掛かることが予想されます。

 データはインターネット上のクラウドに集積されますので、通信途上のデータと、クラウド上のデータをどのように守るかという点も重要になります。



IoT通信の課題

 IoTの通信方式についてはいくつか課題があります。現在の無線LANは人向けに作られたもので、モノ向けに作られたものではありません。3G/LTEなどは、単価が高すぎます。また、設定が難しく誰でも簡単に使えるものではありません。また、セキュリティなどへの懸念もあります。



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2017/10/16           作成










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