携帯電話/スマートフォン
SIM(Subscriber Identity Module、契約者を識別する規格;通称はシム)カードとは、電話番号を特定するための固有のIDを記録したICカードのことです。SIMカードがないと通信会社は、自分の契約者かどうか判断できませんので、その通信を許可していいのか分かりません。
従来型(ガラケー)の携帯電話では、携帯電話本体に電話番号を登録していましたが、スマホ(3G)になってから、SIMカードに電話番号を登録するようになりました。
ということは、SIMカードがないと、スマートフォンは使えないということでしょうか?そういうわけではありません。電話が使えないというだけです。スマートフォンには電話以外の機能もありますので、Wi-Fiを使えば、インターネットに接続したり、アプリを利用したり、IP電話を利用したりできます。ただし、Wi-Fi環境がそばになくては使えません。最近はポケットWi-Fiルータという機器がレンタクできますので、これをポケットにでも入れておけば、外出時にもWi-Fiが使えます。
SIMカードは量販店や店舗やオンラインショップなどで入手できます。ただし、購入ではなく貸与という形になりますSIMカードは通信会社からの貸与品で、SIMカードの料金を支払うというより、そのSIMカードに紐づいた契約料、使用料を支払う形になります。
SIMカードにはいくつかの種類がありますので、自分のスマートフォンのサイズと通信方式に合わせて選ばなくてはなりません。サイズは標準SIM(15mm×25mm)とマイクロSIM(12mm×15mm)、ナノSIM(8.8mm×12.3mm)の3種類です。基本的にはスマートフォンのサイズに合わせてください。ただし、SIMがスマートフォンのサイズより小さい場合は、スマートフォンのサイズに合ったアダプタを付けて使うこともできます。
SIMカードの取り付け方は次の通りです。※Sony Xperia(Docomoのスマートフォン)の場合
作業は必ず、電源を切った状態で行ってください。データの読み込み中や書き込み中は、絶対に電源を切ったり、本体からトレイを取り出したりしないでください。SDカードを既に取り付けている場合は、本体からトレイを外す前に、必ずSDカードのマウントを解除してください。
SDカードのマウント解除の方法は次の通りです。
●SDカードのマウントを解除する方法
1.ホーム画面でアプリケーション一覧を選択してください。
2.「設定」を選択します。
3.「ストレージ」を選択します。
4.「SDカードのマウント解除」を選択します。
5.「OK」を選択します。これで完了です。
※作業が終わったら、再度マウントの設定をします。
●トレイの取り外し方/SIMの取り付け方
SIMカード/SDカードの挿入口のカバーを開いてください(Xperiaの場合はディスプレイを下にした状態にしてください)。トレイの突起部に指先を掛けるとトレイを引き出すことができます。SIMカードはIC部分を上にした状態でトレイに乗せてください。SIMカードにもトレイにも切り欠き(図の左下部分)がありますので、それを合わせてください。
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SIMカード
ICを上にしたところ |
トレイ
矢印が挿し込む方向 |
トレイには矢印が書かれていますので、その方向に従って本体に挿してください。
トレイを本体に挿し込んでまっすぐに押し込んでください。挿し込めない場合には無理しないでください。ICがトレイ上でずれてしまっている場合がありますので、慎重に押し込みます。ずれていなければすんなりと挿し込めるはずです。
うまく挿し込めたら、挿入口のふたを閉めてください。
※挿し込む方向、ICカードの裏表には注意してください。間違えると、SIMカードスロット内部の端子が損傷して、スマホが故障してしまう可能性があります。
最初にSDカードのマウントを解除している場合は、再度マウントしてください。SDカードのマウントとは、携帯本体にSDカードを認識させることです。順番は先ほどの説明の通りですが、設定>ストレージ>「SDカードをマウント」を選択してください。表示が「SDカードのマウント解除」になっていれば、OKです。
SIMカードを挿入したら、通信方式とアクセスポイントの設定をしなくてはなりません。スマートフォンとSIMカードをセットで購入した場合は、既にこの設定がしてありますので、電源を入れるだけですぐに使えるようになりますが、スマートフォンとSIMカードを別々に購入したときは設定が必要となります。
通信方式はSIMカードに合わせて、3G、LTEなどの選択をします。会社によって提供する3G/LTEの周波数帯が違うので、よく確認してください。通信方式を選んだあとは、スマホの画面にアンテナピクト(アンテナマーク)が立ちます。次は、アクセスポイント(APN)の設定を行ってください。APNはSIMカードの購入時に同梱されている設定項目を元に入力してください。設定が終わると、アンテナピクトの横に3G、H、LTE、4Gといった文字が表示されるはずです。これが表示されていれば通信ができる状態です。
APN(Access Point Name、アクセスポイントネーム)は、接続先のサーバの情報です。大手キャリアの端末であれば、端末に既にこの情報が書かれていますので、改めて設定する必要はありませんが、MVNOのSIMの場合はこのAPNの設定を自分でしなくてはいけません。
設定は簡単ですの心配いりません。Web等でMVNOの申し込みをすると、SIMパッケージが送られてきます。名刺大のカードにSIMカードが収まっていると思います。(電源を切って、)これを端末のスロットに挿入します。(電源を入れれば)、これで、SIMが使える状態になりましたので、設定画面を開いてください。設定の中に「モバイルネットワークの設定」があると思いますので、「アクセスポイント名」欄に、MVNOのアクセスポイント名やユーザ名、パスワードなどを入力して保存してください。アクセスポイント名や、ユーザ名、パスワードなどはSIMパッケージに記載されています。公式サイトでも見ることができます。
※モバイルネットワークの設定は、端末によってメニューの名称などが異なっている可能性があります。「設定」の中に「モバイルネットワークの設定」が見つからなかったら「その他」のようなところを見てください。そこにあるかも知れません。
最近は、MVNOでも端末とSIMカードをセットで販売している例もあります。セット販売されているSIMならAPNの設定は既に済んでいるはずです。
SIMロックとは他の携帯電話会社のSIMカードが使えないように、端末にロックがかけられていることです。ロックとは、利用者がSIMカードを取り出せないようにロックを掛けていること?ICだから手で触ったりするとデータが壊れて大変だから?いやいやそういうことではなくて、スマホからSIMカードを抜いて、他のキャリアのSIMカードを挿し込んでも、通話やデータ通信ができないように制御されているという意味です。
ドコモの端末であれば、ドコモのSIM、auならauのSIM、ソフトバンクならソフトバンクのSIMしか使えません。これがSIMロックです。ドコモで契約したスマホに、ソフトバンクやauのSIMカードを入れても使えないようにしています。この制御はユーザは自分で解除することができません。これによって、キャリアは自分のユーザが他のキャリアに流失するのを防ぐことができます。つまり、顧客の囲い込みです。同じ会社の端末とSIMカードなら、SIMカードを挿し替えて使うことができます。ただし、auの場合は、auのSIMカードでも挿し替えができない場合があります。この場合には、auショップに持ち込んで、SIMの挿し替えをしてもらわなくてはなりません。
※2015年5月1日にSIMロック解除義務化がスタートしました。
契約の縛りとは、携帯電話・スマートフォンなどで長期(最低2年以上)の使用(事業者などとのサービス利用契約)を前提に、基本料金や各種サービスの利用料金を割り引く制度のことです。
携帯を使っている人のほとんどは家族割り引きなどのオプションを使っていると思いますが、このようなサービスを受けている人は「携帯電話サービス契約の2年縛りと自動更新」という条件で、携帯電話事業者(キャリア)との間でサービス契約を締結しています。2年縛り付きで契約しないと通話料金の大幅割引が受けられないし、端末をセットで購入する際の値引きやキャッシュバックの適用などが受けられません。
2年縛りで契約すると2年間は解約できません。どうしても解約したいという場合は契約違反となりますので、違約金をとられます。それだけではありません。2年だけ使って、その後は違う会社に乗り換えようと思ってもそうは簡単にはいかないのです。2年経過すると、自動的にまた2年契約が延長されてしまいます。前の契約と、次の契約までの期間は1か月(現在は2ヵ月になっています)で、その1か月の更新期間中に何もしないでいると、自動的に契約が延長されてしまいます。しかも、何時契約が終了するか、あるいはしたかの連絡は携帯電話事業者からはありません。何時契約が終了するかは利用者自身が把握していなくてはなりません。
大手のキャリアがどうしてこんな詐欺まがいのやり方をするのかということですが、このこと自体は契約時に説明されたり、パンフレットや申込書に書いてあることです。ただ、ちゃんと聞いていなかったり、あるいは忘れてしまったりということも多いでしょう。覚えていても2年ごとのチャンスが来た時に、ちょうどそのタイミングで欲しいスマホがあるということは少ないと思います。契約更新のチャンスを逃すと、また2年間は我慢しなくてはなりません。
※違約金は各社同じで9,500円かかります。現在は契約更新期間は3社とも2ヵ月となっています。
※機種変更は2年以内でも可能です。2年契約の縛りは携帯の会社を変えるときの話で、ドコモの携帯から、ドコモのスマホにするような場合はドコモの契約を解除するわけではありませんので、違約金は発生しません。
さすがにこれはまずいし、携帯電話事業が伸びない原因の1つにもなっているということで、総務省が改善を呼びかけた結果、現在はあたらいい契約方式となっています。今回は3社の足並みが揃っていません。(3社とも2016年6月1日開始)
≪ドコモ≫
ドコモでは2年契約の終了後に、解約金の有り無しを利用者が選択できるようにしました。解約金なしで自由に解約できるコースが「フリーコース」で、引き続き解約金有コースを続けるプランが「ずっとドコモ割コース」です。
・「フリーコース」:基本料金はそのままで、解約金不要で解約できるコース(更新期間中に申し込むことが必要)
・「ずっとドコモ割コース」:引き続き2年間利用を約束することで、「ずっとドコモ割」や「更新ありがとうポイント」が適用になるコース(更新期間に申し込むことは不要)(2年定期契約の更新期間以外での解約には解約金9,500円が必要)
≪au≫
auの新2年契約は2年後に解約できる代わりに、2年縛りのプランより月額基本料が300円高くなります。年額で3600円高くなりますので、2年後に確実に解約する予定の人以外にはあまり薦められません。
≪ソフトバンク≫
3年目以降(25か月目以降)であれば、いつでも解約金なしで解約可能となりましたが、毎月の料金設定が300円高くなっています。また、違約金がなくなる3年目以降も基本料金はそのままです。
1G、2G(従来型のいわゆるガラケー)の時代は、携帯電話本体に電話番号を登録していました。どの端末を使うかと、どの携帯会社を使うかが不可分一体となっていたわけです。しかい、3G(スマホ)になると、電話番号などの情報がSIMカードに登録されるようになります。そうすると、理論上はSIMカードを入れ替えれば、端末はそのままで、携帯電話会社を乗り換えることができるはずですが、実際はそうなっていませんでした。携帯電話会社で販売しているスマホでは、その携帯電話会社のSIMカードしか使えないようになっていました。これをSIMロックといいます。
SIMロックがかかっていると、キャリアの乗り換えの際は新しいスマホ端末を買い直さなくてはなりません。これでは、いくら携帯本体と登録者情報を記載したSIMを分離しても、あまり意味がありません。
そこで2015年の5月1日に、総務省はSIMロック解除の義務化に踏み切りました。
※2010年に総務省は「SIMロック解除に関するガイドライン」を策定し、SIMロック解除を促していました。これに従って、NTTドコモはiPhone、iPad以外の全機種でSIMロック解除を実施しましたが、ソフトバンクは少数機種でのみロック解除に応じていました。auはロック解除には全く応じていませんでした。各社の足並みがそろわないとロック解除の意味がありませんので、2015年5月1日に総務省はロック解除の義務化に踏み切ったわけです。
※2015年5月1日に「SIMロック解除に関するガイドライン」が改訂され、「事業者は原則として、自ら販売した全ての端末についてSIMロック解除に応じるものとする」と明記されました。
MVNOサービスの格安SIMを入手した人にとっては、SIMロック解除はありがたいことです。SIMロックが解除されないと、新たにSIMフリー端末に買い替えなくてはなりませんが、SIMロックが解除できれば、今まで使っていた端末をそのまま使い続けることができます。これは、MVNOにとっても追い風となります。
2015年5月のSIMフリーによって、これ以降に発売されたすべての端末がSIMロック解除の対象となりました。SIMロックを解除すれば、端末を「SIMフリー」状態にすることができますので、乗り換え先のキャリアでも同じようにその端末を使用することができます。あるいは格安SIM(MVNO)を利用することで、料金を安く抑えたり、外国旅行の際には現地のSIMカードを使用して、現地の回線でスマホを使うことができます。
SIMロックの条件は各社でまちまちですので、それについて説明します。ただし、SIMロック解除ができるのは、SIMロック解除に対応した機種に限ります。
≪ドコモ≫
①180日以上利用していること
※解約したスマホでも、解約から3か月以内ならSIMロック解除が可能です。
②2015年5月以前の端末でも対応機種はSIMロック解除可能
※2015年5月以前の端末はドコモショップでのみ対応しています(手数料は3,240円)
※ただし、2015年5月以降の端末は、購入から6ヵ月経過している必要があります。
③ネット申し込みは無料。窓口、電話受付の場合は手数料3,240円
④iPhoneはSIMロック対象外
≪au≫
①180日以上利用していること
※契約解除後の端末は3か月以内ならSIMロック解除に応じてもらえますが、契約者本からの申し込みに限られます。
②auでは、2015年4月22日までに販売されたスマホは、一部の機種で対応しています。
※ただし、2015年4月以前に販売の機種はauショップでの対応のみとなっています。
③ネット申し込みは手数料無料、窓口での受け付けは3,240円の手数料
④iPhoneはSIMロック対象外
≪ソフトバンク≫
①181日以上使用していること
②2015年5月以降に発売されたSIMロック解除機能付きの製品であること
③解除手数料はネットでは無料、ショップでは3,240円。ただし、SIMロック解除を行う製品をソフトバンクから購入し、それを現在利用中のユーザのみ(利用料金を滞納していないこと)
SIMロック解除した端末で他社のSIMカードを使う際は、端末が対応する周波数帯を確認し、各携帯会社やMVNOサービスに合わせてAPNを設定しなくてはなりません。周波数帯が合わないとつながらない可能性があります。
スマートフォンは3GあるいはLTEを使います。LTE以前は、ドコモとソフトバンクは3GのW-CDMAを採用していましたが、auはcdmaOne(米クアルコム)を採用しましたので、auとドコモ、ソフトバンクの間には互換性がありませんでした。その後、auはCDMA2000(米クアルコム)を採用したのですが、これはcdmaOneとの互換性を重視したもので、ドコモとソフトバンクのW-CDMAとはやはり互換性の問題が残ってしまいました。
※W-CDMAは世界の多くの通信会社が採用している通信方式ですが、auのCDMA2000は世界でもマイナーな通信方式です。
LTEでは、ドコモ、au、ソフトバンクの3社が何れもFDD-LTEという方式を採用したため、周波数によっては互換性があります。
※携帯キャリア各社は音声通信は3G通信を使用し、データ通信はLTEを使っていますので、データ通信は互換性があるが、音声通信は互換性がないということになります。ただ、LTEは互換性があるといっても、スマホのLTEの周波数帯が、ドコモとau両方のバンドをカバーしていることが前提です。
※SIMロック解除したドコモの端末にau回線のMVNOのSIMを挿入しても、音声通信はできないということになります。逆にSIMロックを解除したau端末にドコモ回線のMVNOのSIMを挿入しても、データ通信はできるけれど、音声通話はできないということになります。
※2015年から各キャリアがデータ通信だけでなく、音声通話もLTE回線を使う「VoLTE」普及へと舵を切ったこともあり、現在はキャリアの端末は全てVoLTE対応機種となっていますので、上記(注釈)のような問題は解消しています。
各事業者がLTEで使用している周波数帯は次の通りです。
周波数帯/
事業者 |
700
MHz帯 |
800
MHz帯 |
900
MHz帯 |
1.5
GHz帯 |
1.7
GHz帯 |
2.0
GHz帯 |
band
28 |
band
18/26 |
band
19 |
band
8 |
band
11 |
band
21 |
band
3 |
band
1 |
NTTドコモ |
○ |
|
○ |
|
|
○ |
○ |
○ |
au |
|
○ |
|
|
○ |
|
|
○ |
ソフトバンク
Y!mobile含む |
|
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|
○ |
|
|
○ |
○ |
携帯会社が販売している端末は、各社の提供する周波数帯に最適化されているため、他者のSIMカードを挿入した場合、利用できる周波数帯が少なくなる可能性があります。利用する場所によって電波が届きにくくなったり、圏外になったりする可能性もあります。
※一部の機種ではSIMロック解除しても接続できないなどの問題があることが報告されています。MVNO各社は動作確認してその結果をWebに掲載していることが多いので、購入しようとしている会社のサイトで事前に確認しておいた方がいいと思います。
※SIMロックを解除しても、テザリングは自社のSIMカードしか利用できないというものもあります(ドコモの端末)ので、注意してください(※テザリングAPNにロックがかかっている可能性があります)。
格安スマホという言葉を最近よく聞きますが、格安スマホとは、スマートフォンに格安SIMを組み合わせたものです。では、格安SIMとは何でしょうか。格安SIMとは、ドコモやau、ソフトバンクなどの大手キャリアから通信設備を借り受けてサービスを提供しているMVNOが提供しているSIMです。
MVNOが提供しているSIMを使うと、そのMVNOが使っているキャリアが運営する携帯電話網を使って通話することができます。
MVNOを使う場合は、基本的には自分でSIMフリーと呼ばれる端末を用意して、その端末に自分でSIMカードを装着する必要があります。
※基本的にはユーザが自分で端末を用意しなくてはなりませんが、MVNOが格安スマホとして、格安SIMと端末をセット販売している場合もります。
大手キャリアの場合は、いわゆる「2年縛り」などによってキャリアの乗り換えが難しいのですが、格安スマホではこのような契約の縛りが緩いので、ユーザはその時々で自分にとって最もメリットの高いプランに容易に乗り換えて使うことができます。
SIMカードがなくてもWi-Fiが使えますので、Wi-Fiの使える環境にいれば問題ありません。Wi-Fiがつながらない所にいくと何もできなくなってしまいますが、モバイルのWi-Fi機器を持ち歩けば、いつでもWi-Fiができます。モバイルWi-Fi機器があれば、インターネット接続ができますし、Facebook、TwitterなどのSNSもできますし、Skypeや050Plus、LINEなどの無料電話アプリを入れれば電話もできます。
※最近は持ち歩きに便利なポケットWi-Fiルータがあります。財布に入る小ささを売りにしているものもあります。
※SIMを抜いたiphoneはiPod touchと同じような使い方になります。
ただし、電話回線(3G/4G回線)を使って何かをしようとすると、何もできません。
インターネット用にモバイルブロードバンド回線への接続機能を持つルータです。モバイルルータ、Wi-Fiルータ、ポケットルータなどと呼ばれることもありますが、同じものです。ルータ機能と無線LANアクセスポイントの機能が一体化しています。
ルータとしての機能を持っていますので、パソコンやタブレット、スマホなどを(最大で10台程度)一度にインターネットに接続することができます。
LAN側のインターフェースはWi-Fi規格で、WAN側はモバイルWiMAXや携帯電話、PHSなどの無線MANを使ったタイプと、自らは無線MANへの接続機能を持たず、有線で外部機器(代表的なものとしては携帯電話)と接続し、その外部機器を介して無線MANに接続するタイプがあります。
代表的な利用形態としてはWiMAXを使ったモバイルルータがあります。通信速度が速く、動画も問題なく見られます。au、GMOとくとくBB、BIGLOBE、UQ WiMAXなど20社以上の会社がサービスを提供しています。
もう一つの代表な形態は格安SIMとSIMフリーのモバイルルータの組み合わせです。格安SIMをSIMフリーのモバイルルータに挿して使います。格安SIMのデータ専用のプランなら違約金がかからないので、いつでも好きな時に解約できるというメリットがあります。楽天モバイル、イオンモバイル、IIJmio、mineo、スマモバなどがサービス提供しています。
ローミング(roaming)とは、契約している通信事業者のサービス提供の範囲外でも、もしその事業者が他の事業者の設備を借りられるように提携している場合には、その提携事業者のサービスを受けられるサービスのことです。このようなサービスを海外で受けられる場合は国際ローミング(international
roaming)といいます。
ローミングは、インターネット接続、携帯電話サービス、移動体データ通信サービスなどで提供されていますが、単にローミングという場合、携帯電話ローミングを指している場合が多いようです。ローミングは事業者間の提携に基づいて提供されるサービスですので、利用者は手続する必要はありません。契約事業者の通信設備が利用できないときに、提携先の事業者の通信設備が使えるなら状態なら自動的に切り替えが行われます。
ローミングでは、追加料金が必要な場合と、必要でない場合があります。気を付けたいのは国際ローミングでは従量制(通話時間や送信データ量に応じて課金)となっていることが多いことです。このような場合は、思わぬ高額請求をされることがありますので、注意してください。
基本的には日本で使っているスマートフォンならそのまま海外でも使えます。しかし、設定をそのままにしておくと思わぬ高額請求をされることがありますので注意してください。
●Wi-Fiだけ使う場合
海外ローミングを使うと思わぬ高額請求をされる可能性がありますので、音声通話、SMS(Short Message Service)を使わなくていいなら、Wi-Fiだけにしてしまいましょう。
設定は「設定」の中の「機内モード」をONにします。それから、「Wi-Fi」をONにします。
※PCやiPadを使用したい場合、あるいは日本で使用している携帯をそのまま持ち込んで、Wi-Fiでだけ使いたいという場合は、Wi-Fiルータが必要です。
●海外パケットし放題の注意点
海外でも日本と同様に携帯を使用すると、海外パケットし放題という設定に自動的に変更されます。「海外ダブル定額の対象以外の事業者でも勝手に接続」されてしまいますので、自分の携帯会社と契約している事業者を事前に確認して、手動で設定してください。課金は現地時間ではなく、日本の1日で課金されます。現地で1日でも、日本時間で、2日にまたがっていると、2日分の計算になってしまいます。
海外でも日本で使用している携帯をそのまま使う場合には、契約している事業者のサイトでプランをよく確認しておいてください。海外で一週間以上滞在する場合は、現地の携帯か、Wi-Fiルータを契約したほうがいいでしょう。
格安スマホとはその名の通り、格安なスマホです。何に対して格安かというと、いわゆる3大キャリア(大手の携帯電話会社)のスマホと比べて大変格安になります。何故格安になるかというと、SIMに格安SIMを使っているためです。つまり、格安スマホとは、格安SIMを使うスマホのことです。
格安SIMと格安SIM対応のスマホは、一般的にはユーザが個別の購入しますが、近頃はセットで販売されていることもあります。
SIMフリーとは、SIMロックが解除された、あるいはもともとSIMロックしてない端末という意味です。SIMロックがかかっていませんので、格安SIMや海外のSIMなど、通信方式と対応バンドさえ合っていれば、何でも使うことができます。つまり、機種とキャリア、MVNOを自由に選択できます。
SIMフリー端末なら、自由にSIMを選択できます。キャリアでも、MVNOでも自由に、自分の通信スタイルに応じて選ぶことができるという自由度があります。自分の毎月の通信量をよく把握している人は、それに合わせて格安のプランを選ぶことができます。しかし、格安だから安くなるだろと思い込んでいると、かえって高くつくこともありますので注意が必要です。
SIMフリー端末では、速度や通信を保証されていません。SIMフリー機は全てのキャリアやMVNOでの通信を検証しているわけではないので、十分な速度が出ないことや、つながらないこともあります。また、MVNOによっては時間帯で速度が大きく異なることもあります。また、SIMフリー対応端末は機種が少なく、気に入ったものを選べるかは分かりません。
MVNOによる格安SIMが普及してきて、SIMフリー端末を利用する人も増えてきました。フリーだから何でもつながると勘違いして買ってみたらつながらなかったという人もいるかもしれません。設定ミスならばサポートで解決するのですが、周波数が合わないということなら、使えないということになります。
※今までは携帯各社は、音声には3Gを、データ通信にはLTEを使っていました。この3Gの方式が各社同じなら問題ないのですが、ドコモとソフトバンクは世界的に普及しているW-CDMAという方式を採用し、auはCDMA2000というマイナーな方式を使っています。LTEに関しては、三社がともにFDD-LTEという方式を使っています。従って、ドコモ、ソフトバンクの間には、データ通信の互換性はあるが、音声通信については互換性がないということになります。ドコモの端末のSIMを解除して、au回線のMVNOのSIMを挿入しても、データ通信はできますが、音声通信はできません。同じように、auの端末のSIMを解除して、ドコモのMVNOのSIMを挿入してもデータ通信はできますが、音声通話はできません。ところが2015年からは各社とも音声通信に関してもLTEを使うようになりましたので、上のような問題は解消しています。
周波数は、電波の波が1秒間にどれだけ繰り返されるかを示す尺度です。周波数にはヘルツ(Hz)という単位が使われます。1秒間に1回繰り返す波が「1Hz(1ヘルツ)」です。1MHzは1秒間に100万回繰り返します。この波は搬送波といいます。情報を乗せて運ぶ波だからです。音声や文字、画像などを電気信号に変えて、この搬送波に乗せて流します。これを変調といいます。搬送波に、如何にして情報を乗せて運ぶかが、電気通信技術です。
電波には反射、回折、減衰、干渉などの性質があります。周波数が高くなればなるほど直進性が強くなり、速度が遅くなると回折性が増します。また、周波数は速度にも関係します。周波数が高くなると、その分速度が速くなり、周波数が低くなると速度が遅くなります。
周波数が高くなると、速度が増し、直進性が増しますので、建物などに当たって跳ね返されたり、障害物に当たって進行方向を変えられたりします。障害物に当たってから、目的地に到達した電波と、直進して目的地に着いた電波は時間的にちょっとずれてしまいますので、互いに干渉しあって、雑音を発生します。周波数が低くなると回折性が強くなりますので、建物などの障害物に当たっても回り込んで目的地に到達することができます。電波は端末にまで届きやすくなります。携帯電波で使用する周波数のうち700~900MHzは周波数が低く、回折性が強いので、他の周波数に比較して電波が届きやすいという性質をもっています。そのため、この周波数帯はプラチナバンドともてはやされています。地方で利用する人は、この周波数を重視すべきで、このプラチナバンド(platinum
frequency bands)に対応した端末を使うべきです。ただ、この周波数帯は、海外では使われることが少ないため、海外スマホは殆どこの周波数帯に対応していません。また、電波には減衰性があり、遠くまで届くことができません。基地局から離れるほど電波が弱くなります。
各キャリアの周波数対応は次の通りです。初めに示すのは各事業者が3Gで使用している周波数帯です。
周波数帯/事業者 |
NTTドコモ |
KDDI(au) |
ソフトバンク
Y!mobile含む |
800MHz帯 |
バンド
クラス0 |
|
○ |
|
バンド6/19 |
○ |
|
|
900MHz帯 |
バンド8 |
|
|
○ |
1.5GHz帯 |
バンド11 |
|
|
○ |
1.7GHz帯 |
バンド9 |
|
|
○ |
2.0GHz帯 |
バンド
クラス6 |
|
○ |
|
バンド1 |
○ |
|
○ |
次に各事業者がLTEで使用している周波数帯を示します。
周波数帯/事業者 |
NTTドコモ |
KDDI(au) |
ソフトバンク
Y!mobile含む |
700MHz帯 |
バンド28 |
○ |
○ |
|
800MHz帯 |
バンド18/26 |
|
○ |
|
バンド19 |
○ |
|
|
900MHz |
バンド8 |
|
|
○ |
1.5GHz帯 |
バンド11 |
|
○ |
|
バンド21 |
○ |
|
|
1.7GHz帯 |
バンド3 |
○ |
|
○ |
2.0GHz帯 |
バンド1 |
○ |
○ |
○ |
(参照)総務省のホームページ:各携帯電話事業者の通信方式と周波数帯について(各携帯電話事業者の通信方式と周波数帯) 2017/1/29
http://www.soumu.go.jp/main_content/000385478.pdf
注意:SIMフリー端末はそれぞれ対応している周波数が違っていますので、どのMVNOを使用するか考える際は、よく検討してください。
注意:各キャリアの対応バンドに関しても、東名阪でエリアが広がっているものや、地方都市部で展開しているもの、全国各地で利用可能なエリアなど、様々ですので最新情報をよく確認してください。
注意:各キャリアの使用周波数については、変わる可能性があります。SIMフリーの機器を購入時に最新情報を確認してください!!!
格安スマホが最近もてはやされていますが、誰にでも向いているわけではありません。ここでは、格安スマホに向いている人、格安スマホでも大丈夫な人とはどんな人なのか考えてみましょう。
手順書を見ながらSIMの設定ができる人でないと困ります。ドコモやauのキャリアではショップがあちこちにあり、利用者に代わってSIMを挿入したり、接続設定をしてくれますが、格安スマホでは自分で設定しなくてはなりません。ただ、これは別段難しいことではありません。手順書に従って行うだけですので、機械いじりが苦でない人なら大丈夫です。
殆ど電話を掛けない人なら向いています。格安スマホは、家族割りや同一キャリア内の無料電話などのサービスを提供していませんので、音声通話を頻繁にする人はかえって割高になってしまいます。基本料金は30秒で20円ですので、1か月に2時間程度通話すると、40×120=4800円となります。1か月に30分程度しか音声通話をしない人には向いているかも知れません。データ通信プランで契約して、LINEやFacebookメッセージ、Viber、Skypeなどの無料電話で代用すれば、基本料金をぐっと抑えることができます。
それから、携帯電話会社のサービス(例えば連絡先のバックアップ、キャリアのメール※例えば「ドコモメール」)を使わない人なども向いています。また、Youtubeなどの動画をほとんど見ない人なども向いています。
通勤途中以外は、ほとんどWi-Fi環境の中にいる人にも向いています。家にWi-Fi環境があり、勤務先にもWi-Fi環境が揃っている人です。このような人はパケット通信を殆ど消費していませんので、パケ放題の契約は無駄になります。携帯でのネット利用も毎日1時間程度で、WebやSNSを使う位ならパケットをそれほど消費していないと思われます。このような人も格安スマホで適切な通信量プランを選択できます。自宅にWi-Fi環境が揃っている人は自宅ではできるだけWi-Fiを使うようにしてください。
出張が多い人にも向いています。ドコモ以外のキャリアを使っている人は、もう一台ドコモのMVNOの格安スマホを持っていると便利かもしれません。ドコモは基地局が多いので、地方に行ってもつながり易いからです。また、ドコモやauの大手キャリアの掛け放題を持ちつつ、データ通信用に格安スマホを使うという手もあります。
海外出張が多い人はSIMフリーの端末にして、現地のプリぺード式のSIMカードに挿し替えるという手もあります。マイクロSDカードの挿し込み口にもSIMカードを挿し込むことができるデュアルSIMスロットなどの端末なら、空きスロットに海外用のSIMを挿し込んで使うこともできます(楽天モバイルhonor6
plusなど)。
ドコモなどのキャリアのスマホを既に持っていて2台目が欲しいという人、あるいは既に2台のスマホを持っている人は、2台目のスマホはSIMロックを外し、SIMカードを挿し替えて、MVNOに乗り換えた方がいいかも知れません。
格安スマホではダメな人もいます。どんな人でしょうか。
お年寄りなどの機械に弱くて、SIMの設定などができない人は向いていません。トラブルがあると、直ぐにショップに駆け込んで助けを求める人も向いていません。MVNOにはショップは殆どありません(余りありません)。
通話をよくする人にも向いていません。MVNOのプランには家族割りや、同一キャリア内の無料通話、掛け放題などのプランがありませんので、よく通話する人は、格安スマホではかえって割高になります。
キャリアメールが必要な人も格安スマホは向いていません。自分が必要なくても、地方で暮らしている親や親せきなどとの連絡手段としてキャリアメールが必要という人もいると思います。お年寄りはGmailや、LINE、チャットツールなどを使いこなせない場合が多いので、このような方にはキャリアメールがどうしても手放せません。
より高速なデータ通信が必要な人も格安スマホは向いていません。MVNOのデータ通信速度の公称値は、キャリアと同じなのですが、大手キャリアほど速度が出ていないようです。FacebookやLINE、Webなどでは差は実感できないかもしれませんが、より高速なデータ通信を必要としている人は、格安スマホに乗り換えるのはやめた方がいいかも知れません。
キャリア決済を利用したい人も格安スマホは向いていません。キャリア系のサービスは回線契約していないと使えないので、そのサービスを重要だと思う人はキャリアのサービスの方がいいかも知れません。
MVNO(Mobile Virtual Network Operator)は、日本語では「仮想移動体通信事業者」といいます。「仮想の」(virtual)という言葉がついています。これは「仮想の」移動体通信網を持つという意味です。つまり、自前の物理的な通信網を持たず、キャリア(MNO)にお金を払って、回線網を借りて、サービスを提供しています。
主なMVNOとしては、OCNモバイルONE(NTTコミュニケーションズ)、IIJmio(IIJ)、DMM mobile(DMM.com)、b-mobile(日本通信)、NifMo(ニフティ)、楽天モバイル(フュージョン・コミュニケーションズ)、BIGLOGE、PLAY
SIM(So-net)、UQ mobile、mineoなどがあります。
※NTTドコモの回線を利用している(NTTドコモをMNOとしている)事業者が多く、auの回線を利用しているMVNOはUQ mobileとmineoだけです。ソフトバンク回線では、純粋の意味でのMVNOはありませんが、Y!mobileが格安SIMサービスをしているという意味で、これに当たるとされています。
※UQ mobile(UQ コミュニケーションズ)は自前のWiMAX回線を持っていますが、その意味ではMNOでもあります。
私たちが一般にモノを買う場合は、間にいろいろの業者が介在すると、どんどんモノの値段が吊り上がっていきます。例えば、野菜の場合、農家から市場を経由して、間に仲卸業者が入って、八百屋さんが販売すると、高くなるのですが、スーパーのように直接契約農家から仕入れると安く販売することができます。ところが、スマートフォンの場合は、その常識が通用しません。私たちがドコモから直接買う(ドコモの電波を利用させてもらう契約)よりも、MVNO業者と契約して、ドコモの電波を利用したほうが安くなります。合点がいかないという人も多いと思いますので、少し考えてみたいと思います。
これは必然的に安くなるというのではなく、MVNOは安くするための努力をしているということだと思います。MNOは安くするよりもより品質の良い通信を提供しようと努力しています。
MVNOだって高級/高品質路線を選ぶことも理論的にはあり得ます。MVNO同士が競い合ってキャリアを超える高品質/高価格路線を進むことだってできるはずです。ただ、日本の3大キャリア(3大携帯電話会社)が高品質/高価格路線でしのぎを削っているのが現状ですので、小規模なMVNOがその中に割って入ることは難しいと考えられます。現実には、MVNOには低価格路線しか残されていないということになります。MVNOは必然的に安くなるのではなく、3大携帯電話会社が高品質/高価格路線を進む中で、生き残りをかけて安売り競争をしているということになります。
MVNOは必然的に安くなるのではなく、生き残りをかけて安くするための努力をしているということです。どんな努力をしているのでしょうか。
1つ目は、大量に仕入れて、小分けして売るという手法で、単価を安くできるということです。MVNOはキャリアから通信インフラを借り受けて、独自のサービスを追加して提供しているわけですので、借りたインフラを小分けにするということは、電波の使用権を小分けにして販売しているようなものです。
※キャリアは将来の利用者増などを見越して、余裕を持った設備を構築しています。つまり、大手キャリアは回線を持て余し気味に大量に持っているということになります。余った、回線をそのままにしておくと一銭の利益にもなりません(維持費がかかって赤字になります)。そこで、MVNOに貸し出して、利用料をいただくという方法を選択します。
2つ目は、営業コストや広告のコストを削減することで経費を浮かせています。集客も、契約もWebで行うという通販型のスタイルで経費を節約しています。
※3大携帯電話会社は全国に多くの営業拠点を運営しています。いわゆる携帯ショップです。携帯ショップでは使い方が分からないという人をサポートしたり、料金プランの変更や端末故障時の相談窓口になったりしています。MVNOは基本的通販型ですので、実店舗がありません。
※最近いくつかのMVNOが家電量販店や、スーパー、中古携帯販売店と組んで実店舗での営業に乗り出しているのですが、コスト削減と利用者の満足度という二律背反にどのように挑むのか心配になります。
3つ目は、スマートフォン時代になり、電話機自体が個別化、差別化の難しい製品になったということがあります。ガラケー時代は携帯電話端末の開発は、携帯電話会社のサービスと一体不可分の関係にありました。つまり、携帯電話の開発、端末の流通、販売/在庫管理などを全部、携帯電話会社がやらなくてはなりませんでした。そのため経費がかさんできます。しかし、スマートフォン時代になると、電話機と通信サービスが切り離され、電話機を通信サービスと関係なく売り出すことができるようになりました。このように電話機がコモディティ化することで、携帯電話会社、特にMVNOの手から切り離されたことが、MVNOの低価格路線を支えているといえます。電話機はもうどれでも構わないので、端末の流通販売はメーカーや家電量販店に頼り切ることも可能です。
MVNOにするとキャリアメールやキャリア独自のサービスが使えなくなります。メールはGmailやプロバイダーのメール、LINEなどしか使わないという人は問題ないかもしれません。それからMVNOでは通話の掛け放題プランがありません。通話した分だけ通話料金を取られます。家族間や同一キャリア間の無料通話もありません。ただし、MVNOによっては通話料が安くなるアプリを提供しているところもあります。
通常、MVNOは端末とのセット販売はしていませんので、SIMフリー端末を用意しなくてはなりません。ただ、ドコモのネットワークを使ったMVNOなら、殆どの場合、ドコモの端末をそのまま使用できます(ただし、SIMロック解除が必要です)。最近のMVNOは端末を販売しているところもあります。このセットモデルだと動作確認も済んでいるので安心です。
MVNOはコストを抑えるためにWebで集客しています。契約もWebです。実店舗をほとんど持っていませんので、サポートがないと使えない人はやめた方がいいかもしれません。高齢者や機械に弱い人は3大キャリアを使った方がいいと思います。田舎にいる親に格安スマホをプレゼントするというのはあまりお勧めできません。
逆にサポートなど要らないという若者や、機械に強い人はMVNOでもいいかもしれません。
MVNOとMNOを比較すると、MNOの方が通信品質がいいといえます。MVNOは設備面などで余裕がありませんので、混雑時に品質が落ちるといわれています。お昼休みにみんなが一斉に使いだすと、途端につながりにくくなります。ただ、使う時間帯が他の人と違うという場合は、MVNOでもデメリットになりません。また、ネット接続が遅くてもあまり気にならないという人にもお勧めです。
※昼食の時間や夜間のゴールデンタイムあたりになるとつながらないということはよくあることです。
MNOは自前の通信回線を持っていますのでつながり易いのですが、MNOの中でもつながり易さには違いがあります。基地局を全国津々浦々に設置しているドコモのようなMNOはどこに行ってもつながり易いのですが、ソフトバンクのようにちょっと田舎に行くと途端につながりにくくなってしまうということもあります。従って、MVNOでもどのMNOの回線を借りているかで違いが出てきます。
殆どスマホを使わず飾りみたいに持っている人にはMVNOはピッタリです。ただ、音声電話をよく使っている人にはかえって高くつくかもしれません。例えば、ドコモ、au、ソフトバンクだと、家族間通話が無料、同じ携帯電話会社での通話が無料で、その上月1000円分までは無料などという特典がついているのが一般的ですが、MVNOの場合はそんなものはついていません。家族間でも、同じ携帯会社の間でも、30秒間で20円の一律料金がかかりますので、MVNOにするとかえって通信料金が高くなるという人がいることには注意が必要です。普段自分がどれくらい音声電話しているかよく考えてからにした方がいいと思います。
MNO(Mobile Network Operator)は、「移動体通信事業者」です。移動体通信事業者は、基地局などの通信設備を自前で用意した上で、移動体通信サービスを提供している会社です。
NTTドコモ(docomo)、au(KDDI/沖縄セルラー電話)、Softbankモバイルなどの会社がMNOに該当します。一般にキャリアなどと呼ばれています。
※MNOとしてはこれ以外にもPHS事業者やWiMAX系の事業者などがあります。例えば、UQ mobileはMVNOであるとともに、WiMAX事業者として、MNOでもあります。
MVNE(Mobile Virtual Network Enabler)とは、「他社がMVNOに新規参加するのを手助けする会社」のことです。
MVNEの主な事業はMVNOの支援です。通信事業に経験の少ない事業者が、MVNO事業に参入する際の敷居を低くしてあげることがMVNEの仕事になります。MVNEは通信事業の経験豊かな会社でなくてはなりません。実際にMVNEとして活躍しているのはIIJ(Internet
Initiative Japan)やOCN(NTTコミュニケーションズ)、InfoSphere(NTTPCコミュニケーションズ)など、以前から通信事業の経験を積んでいる会社です。
具体的な支援内容としては、MVNOの課金システムの構築/運用、代理人としてMNOとの交渉、スマホやタブレット端末などの調達業務、事業用電気通信設備の設置と卸電気通信役務の提供、MVNO事業の全体のコンサルティングなどです。これだけあれば、通信業界の経験のない会社でも、MVNO事業に乗り出すことができます。DMM.comやパナソニックなどが他業種からMVNOに参入できたのは、MVNEの助けがあったからと言っていいでしょう。
MVNEとMVNOとの関係を見てくると、MVNEは、MVNOが通信品質を決める際の大きな要素となっているといわざるを得ません。各MVNEが支援しているMVNOのサービスを比較してみると、通信品質や改善状況などが互いに似通っているのはそのためだと思います。
MVNA(Mobile Virtual Network Aggregator)は、MNOから「最低購入量」以上の通信サービスを卸価格で購入し、複数の小規模MVNO事業者に再販する業者です。MVNOがMNOから通信サービスを購入する場合、MNO側の要求する最低限の購入量をクリアすることが必要ですが、この最低限の購入量でも小規模のMVNOにとっては、自社の必要とする通信量よりも大きい場合があります。身の丈以上の通信量を買わざるを得ないとすると、経営の無駄が発生してしまいます。そこで、規模の小さなMVNOはMNOからの仕入れについて規模の大きなMVNOに委託して、まとめて買ってもらい、そのMVNOから必要な分だけ、購入するという方法をとっているところがあります。この時、大きな規模のMVNOはMVNAと呼ばれることがあります。
※IIJはMVNOであると同時に、DMMやBic Simなど他のMVNOに通信サービスを再販するという意味でMVNAでもあります。
MNP(Mobile Number Portability)とは携帯電話の番号を変えることなく、携帯電話の契約を他の事業者に切り替えられるサービスです。電話番号が変わると、友人や知り合い、取引相手などに新しい電話番号を知らせなくてはなりませんが、MNPを使えば、新しい電話番号をいろいろの人に連絡する手間が省けます。MNPの導入によって、携帯電話の機種変更やキャリアの変更などが気軽にできるようになりました。しかし、メールアドレスは変更が必要となります。また、プランやサービスは継続できません。
MVNOへのMNPの手順は次の通りです。
初めにMNPの予約番号を取得します。予約番号は転出元の携帯電話会社で発行してもらいます。手数料がかかります。キャリアによって多少異なりますが、2,000円~3,000円となります。この手数料は契約最終月の使用料金と共に精算される場合が多いので、その場で必要ということではありません。MNP予約番号の取得窓口は、キャリアのWebサイト(マイページ)やサポートセンター等の電話窓口、ショップの店頭などです。
MVNOのWebサイトの申し込みフォームで、事前に取得したMNP予約番号を入力し(予約番号には15日間の有効期間が設けられています)、格安SIMの申し込みをします。契約が完了すると、キャリア側の契約が自動的に解除されます。新しいMVNOで「契約事務手数料」が3,000円程度かかります。これは、MNPをするかどうかにかかわりなくかかる手数料ですので、MNPでは合計で5,000程度かかることになります。
MNP転出には「違約金」の発生しない「更新月」を確認する必要があります。解約料の発生しない「更新月」はキャリアのホームページの「マイページ」等で確認できます。
携帯電話の技術はその開発の段階によっていくつかに分類され、世代(Generation)という言葉で呼ばれます。
第1世代(1G)は、アナログ電話の世代です。音声をアナログ電波で送信しますので、ノイズが乗りやすく、盗聴されやすいという欠点を持っています。1979年のサービス開始当時はまだ携帯電話という言葉はなく、「自動車電話」と呼ばれていました。最初の携帯可能な(ポータブル)電話は、ショルダーバックのような大きさで肩から掛けて持ち歩きました。今ほどの大きさになったのは1990年代の後半です。その後、第2世代(2G)に移行し、1Gは2000年に廃止されています。
第2世代(2G)では、デジタル方式が導入されました(1993年)。音声などのアナログ情報もデジタル信号に直して送信します。データを圧縮して、周波数帯を複数のユーザで共有できるようになり、周波数の利用効率もあがりました。デジタルになりましたので、メールやネット接続もできるようになりました。最初はレンタル制でしたが、1994年に買い取り制になりました。その後、電話機の小型化や低価格化が進んで、利用者が急増しています。2Gのサービスは2012年7月まで続きました。
日本ではPDCという規格が主として使われました。PDCは周波数分割と時分割の技術を使ってチャネルを作り、各携帯電話に固定的に割り当てる方式で、データ伝送速度は最大で28.8Kbpsでした。
3Gは第3世代です。現在(2017年)使われているのが3Gです。これは、「ITU」(国際通信連合)が携帯電話の国際標準として定めた[IMT-2000」に準拠する方式です。世代という言葉は、このIMT-2000の標準化の中で出てきた言葉で、「第1世代」、「第2世代」という言葉は、この時点からさかのぼって名付けられたようです。第3世代の特徴はCDMAという技術を使っている点です。
※CDMAという技術には、CDMA2000方式(米国Qualcomm社)や、W-CDMA方式(ドコモ)などの規格があります。ドコモのFOMAはW-CDMAを、auはcdma2000という方式を使っています。
※FOMAはドコモが提供するW-CDMA方式のサービス名称です。Softbank 3Gはソフトバンク(旧ボーダフォン)が提供するW-CDMA方式のサービス名称です。
現在は第3世代に分類されていますが、3.5世代という言い方が適切かもしれません。ドコモはHSDPA(サービス名はFOMAハイスピード)、auはcdma2000
1x EV-DO(サービス名はCDMA1X WIN)という通信方式を使っていて、通信速度は数Mbpsになっています。
※ドコモのFOMAハイスピードは、受信時は最大7.2Mbpsまで、auのCDMA 1X WINでは受信時には最大2.4Mbpsにまで達します。
4Gは第4世代で、2017年から始まります。4Gと同義語のように使われているLTE(Long Term Evolution、「長期的進化」)ですが、もともとは3Gが4Gに発展するまでの間の橋渡し的な役割を期待されていました。しかし、いつの間にか4Gと区別がつかないような状態になっています。4G/LTEは速度としては、75Mbps~150Mbpsと大幅にアップしています。
※LTEは元々NTTドコモが3.9Gとして開発していた技術です。そのためドコモはスーパー3Gと呼んでいました。国際電気通信連合は、この技術をLTEと名づけ、その後、4Gと呼んでもいいと認めたので、auやソフトバンクでは、4G
LTEと呼んでいます。しかし、これは、2016年に始まった4Gとは違いますので、ドコモでは混乱を避けて、Xi (クロッシィ) LTEと呼んでいます。
※4Gの運用開始:NTTドコモ、au(KDDI/沖縄セルラー電話)、ソフトバンクモバイルの総務省への申請では、4Gの運用開始は2016年3月31日になっていますが、実際のサービス開始時期に関しては、2017年になっています。auが一番早く、2017年6月30日、NTTドコモが2017年10月、ソフトバンクが2017年の12月です。
4Gでは通信速度が1Gbpsを超えるといわれています。現在、LTEサービスの最高速度が150Mbpsですので、4Gでは10倍近い高速となります。
4Gに割り当てられている周波数帯は3,480MHz~3,600MHzの間の120MHzで、この周波数帯を3社に40MHzずつ振り分けることになっています。3,480~3,520MHz帯がLowバンド、3,520~3,560MHz帯がMiddleバンド、3,560~3,600MHz帯がHighバンドです。申請では、NTTドコモがLowバンド、auとソフトバンクは共にHighバンドを希望しており、総務省の判断が注目されましたが、実際はNTTドコモが希望通りLowバンド、KDDIがMiddleバンド、ソフトバンクがHighバンドと決定しています。
いずれにしても高周波数帯が利用されますので、デメリットも予想されます。周波数は低ければ障害物を回り込むことができますが、周波数が高くなればなるほど直進性が増してきます。これは周波数の低いラジオなどの電波が障害物を回り込んで進み、マイクロ波が直進して進むことを考えれば分かり易いと思います。4Gの高周波は屋内やビル街でつながりにくいかも知れません。携帯各社は何らかの工夫をしてくる可能性があります。
※4GのLow、Middle、Highの間でも厳密に言えば、障害物に対する回り込みに違いが出るはずですが、実際はどうなんでしょうか?余り違いがなさそうですが?
5Gは第5世代です。ドコモは2020年のサービス開始を目指しているようです。あらゆるものが無線でネットワークに接続するIoT(Internet
of Things)の時代の移動通信システムと想定されています。
キャリアアグリゲーション(Carrier Aggregation、CA)とはキャリア(電波、搬送波)をアグリゲート(aggregate、寄せ集める)ことです。複数のキャリアを寄せ集めることで、転送速度を上げることができます。
※複数のLTE搬送波を同時に使って通信を行う技術です。LTEで使われる搬送波を1つの搬送波コンポーネント単位として扱い、連続、あるいはバラバラの周波数帯でもこれらを複数同時に利用する技術となります。
キャリアアグリゲーションでは10MHz幅や20MHz幅など、現在普通に使われているバージョンのLTEでサポートされている帯域幅を基本単位として、同時に複数のLTE搬送波を使って通信を行います。キャリアアグリゲーションを利用すると、基地局などの機器が従来のLTEとの後方互換性を保ったまま、従来のLTEを上回るデータ通信速度を可能とすることができます。一つの基地局でLTEのみを使った通信と、キャリアアグリゲーションを使った通信のどちらも使えます。キャリアアグリゲーションは電波の使い方の問題なので、ネットワークの作りにあまり依存しません。ただし、端末側はキャリアアグリゲーションに対応したものが必要です。キャリアアグリゲーション対応のエリアでは、従来のLTEや3Gの通信も可能です。
キャリアアグリゲーションのメリットは速度の向上と通信の安定性の実現です。これを支えているのが「周波数ダイバーシティ効果」と「統計多重効果」です。
「周波数ダイバーシティ効果」とは、複数の周波数帯のうち、電波状況の良い周波数帯を優先したり、受信した信号を合成することでノイズを除去したりできることです。800MHz帯と、2.1GHz帯を組み合わせた場合はどうでしょうか。800MHz帯はプラチナバンドですので、みんなが使いたがります。みんなが集まると混雑してしまいますが、この混雑を避けるために2GHz帯が届いている人には2GHzを使ってもらうことができれば、混雑の緩和になります。通信会社にもメリットがあります。混雑緩和のためには新しい基地局を何千と作らなくてはならないのですが、この技術に対応したスイッチを使えば基地局を増強することなく、混雑の解消ができます。
「統計多重効果」とは、ネットワーク全体を効率的に使うことができるというものです。通信をする端末が全て最大の速度で通信する確率は低いとされています。このことの確からしさは、端末の数が増えれば増えるほど増します。つまり、キャリアアグリゲーションを使うことで、より効率的に混雑を分散させることができ、通信速度の低下の要因を減らすことができます。
キャリアアグリゲーションの最大の問題は端末です。MVNO端末ではキャリアアグリゲーションが使えない可能性があります。このことに関してドコモがキャリアアグリゲーションを使わせないように制限しているというような説が出されたことがありますが、これには信憑性はありません。混雑緩和に役立つのですから、MVNOにも積極的に使ってもらいたいと思うはずです。例えば、ドコモの端末のSIMロックを外して、ドコモのMVNOにしてもキャリアアグリゲーションは機能します。しかし、SIMフリーの端末では、海外向けのスペック表にはキャリアアグリゲーションと書いてあっても動作しないことがあります。
キャリアアグリゲーションは、その周波数の組み合わせが標準規格で厳しく規定されていて、一定の規格を満たさないと、機能しません。日本の電波法は世界でも一番厳しいので、海外向けでは機能していても、日本では機能しないということがあるかも知れません。
ドコモは「ここは日本だよ」という信号を常に出していて(標準で定められた動作)、それを受信した端末が日本の厳しい規制に対応した動作に変更する仕組みになっていますが、それができない場合は、「自分はその組み合わせには対応していない」と通知する仕組みになっています。モバイルルータには「ドコモのMVNOでもキャリアアグリゲーション動作」ができることを売りにしている製品も出ていますので、検討してみてください。
テザリング(tethering)とは、通信端末を内蔵したモバイルコンピュータ(例えば、テザリング機能の付いたスマートフォン)を外付けモデムのように使って、他のコンピュータ等をインターネットに接続することです。tetherとは「つなぎ止める、縛る」というような意味を持つ動詞ですので、tetheringは「つなぎ止めること」というような意味になります。
最近よく話題に上るテザリングは、スマートフォンを中継点とすることで、他の通信機器(ノートパソコン、ダブレット端末、ゲーム機など)をインターネットに接続する機能のことです。
パソコンとスマートフォンの間は、Wi-Fi接続、Bluetoothを使って無線接続、あるいはUSBを使って有線接続し、スマートフォンは中継機器として、Wireless
MAN(Mobile WiMAXなど)、あるいはWireless WAN(LTE、AXGP)などをアクセス回線としてインターネットに接続します。
Wi-Fiテザリングはカバン等にスマホをしまったままで複数の機器を接続できるというメリットがあります。しかし、USBテザリングに比較して通信速度が遅い、バッテリ消費が遅いというデメリットもあります。また、他人に中継点を悪用されないかというセキュリティ上の心配もあります。
USBテザリングはUSBを使った有線のテザリングです。Wi-Fiを使ったテザリングに比較して速度が速いのがメリットです。中継端末を充電しながら利用できるという機器もありますが、有線ですので、ケーブルが煩わしいと感じる人もいるようです。接続台数は1台です。
Bluetoothテザリングは、Bluetoothを使ったテザリングです。Wi-Fiよりもさらに速度が遅いのが欠点ですが、バッテリーの持ちが良いというメリットもあります。接続台数は1台です。
テザリング方法 |
通信速度 |
バッテリーの持ち |
セキュリティ |
扱いやすさ |
接続台数 |
Wi-Fi |
○ |
△ |
△ |
○ |
複数台 |
USB |
◎ |
◎ |
◎ |
△ |
1台 |
Bluetooth |
△ |
○ |
○ |
○ |
1台 |
テザリングを利用すると通信量が多くなりがちですので、できるだけデータ定額プランを利用すべきです。特にyoutubeやニコニコ動画などを見る人は検討してください。
各社とも月間における通信量が一定量を超えると通信速度を大幅に落とすなどの規制を行っていますので注意してください。Wi-Fi環境が使えるところにいるときには、3G回線や、LTEなどを使わないように注意してください。
CDMA(Code Division Multiple Access、符号分割多元接続)は携帯電話の第3世代に使われている技術です。複数の発信者の音声信号にそれぞれ発信者の符号をつけて、他の発信者の音声信号と合成して1つの周波数を使って送る方式です。
似たような規格にCDM(Code Division Multiplex、符号分割多重)という方式があります。これは、複数の発信者の音声信号にそれぞれ名前を付けて、複数発信者の音声信号を1つの波長で(1つの搬送波に乗せて)送信する方式です。名前といっても符号化方式の手順に則って、音声符号に乗算されます。受信側では、受信した合成信号に、通話相手の符号を乗算すると、通話相手の音声信号のみを取り出すことができます。
多元接続は、違うところにいる発信者(同一のセル内)が同じ電波を共同で使って通信することです。CDMと多元接続(Multiple Access)を一緒にすると、CDMAになります。
CDMAは同一の周波数帯域内で複数の通信(多元接続)を行うための技術の総称で、技術的には直接拡散符号分割多重接続(DS/CDMA、DS:Direct
Sequence)、周波数ホッピング(FH:Frequency-Hopping)という方式に分類されます。
CDMAの規格にもいろいろのものがあります。主なものは、auが使っている米クアルコム社のcdmaOneや、CDMA2000、NTTドコモのFOMAや、SoftBank 3Gが採用しているW-CDMAです。
近年よく利用される無線通信技術にはWi-FiやBluetooth(ブルーツース)などがありますが、WiMAX(Worldwide Interoperability
for Microwave Access、ワイマックス)もそのうちの1つです。
WiMAXはラストワンマイルをどのようにつなぐかということから始まりました。「ラストワンマイル」とは物理的な1マイルということではなく、通信事業者と利用者を結ぶ通信回線の最後の区間という意味です。通信事業者の最寄りの加入者局から利用者の建物までを結ぶ最後の回線をどのように確保するかは重要な問題です。この部分はアクセス回線と呼ばれ、FTTH(Fiber
To The Home)、専用線、CATV(ケーブルテレビの回線)、DSL(Digital Subscriber Line、デジタル加入者線)などで賄われています。
※FTTHは光ファイバーを伝送路として、家庭にまで引き込むアクセス系の光通信ネットワーク構成のことです。DSLにはいくつかの種類がありますが、その中でもADSLがよく利用されています。ADSLは一般のアナログ線(ツイストペアケーブル)を使用して、上り(アップリンク)と下り(ダウンリンク)の速度を非対称(Asymmetric)とした高速デジタル有線通信技術です。
地方の人口の希薄な地域や山間部などには高速なアクセス回線の敷設が困難です。そこで、このような地域では無線によってアクセス回線を確保しようということになりました。しかし、無線LANでは距離的に足りません。そこで、長中距離をカバーする無線技術を開発しようということになったようです。このような経緯で生まれたのが無線MAN(Wireless
MAN、Wireless Metropolitan Area Network)という考え方です。
※無線MANという考え方には通信の自由化も関係しています。通信が自由化されると、従来NTTが独占していた通信回線が、新規参入業者に開放されるわけですから、従来にも増して利用者増が必要となります。今までの、利用者だけをNTTと他の新規参入業者が取り合っていたのでは、共倒れになってしまいます。そこで、アクセス回線をもっと増強して利用者を増やさなくてはならないということになります。しかし、残っているのは地方の山間地や人口希薄地帯ですので、そこにFTTHやCATV回線、ADLSなどを敷設しようとすると莫大な費用が掛かることが予測され、それをだれが負担するのだという問題が出てきてしまいます。この問題の解決策が無線MANという考え方だったのです。
規格化の作業部会としてはIEEE802.16委員会と、業界団体(チップメーカ/通信機ベンダ/通信事業者)がメンバーとなるWiMAXフォーラムがあります。
広帯域無線としては、以前より研究開発されていたLMDS(Local Multipoint Distribution Service)という技術があります。IEEE802.16委員会はこれを標準化して、EEE802.16という規格を策定しました。更に、IEEE802.16ファミリーとして、IEEE802.16a、IEEE802.16dなどの規格を策定し、更に、これらをまとめる形で2004年6月に、IEEE802.16-2004という規格を策定しています。
IEEE802.16-2004は物理層と、データリンク層の中のMAC副層だけを規定したものですが、WiMAXフォーラムは物理層とMAC副層についてはそのまま取り込んで、その上でIP層、上位アプリケーション層などの仕様、あるいは異なるベンダー、通信事業者間の相互接続を可能とする規格などを追加しました。このIEEE802.16-2004に上位層の規定や異なる機器同士の相互接続性の規定を追加した規格が「WiMAX」と呼ばれる規格です。この規格はあくまで「ラストワンマイル」を補うためのピースであり、固定無線通信(FWA、Fixed
Wireless Access)の規格となります。
WiMAXは、「Worldwide Interoperability for Microwave Access」の略で日本語に訳すとすると、「マイクロを利用した世界標準の通信方式」という意味になります。ラストワンマイルをサポートしなくてはなりませんので、電波が遠くまで届かなくてはなりません。そこで、Wi-Fiや携帯電話などと比較すると、高い周波数帯域(マイクロ波)を利用しています。周波数が高くなると、直進性が増してきますので、ビルなどの障害物に跳ね返されてしまうという問題があります。
WiMAX |
規格 |
IEEE802.16-204 |
周波数帯域 |
2GHz~11GHz帯 |
最大伝送速度 |
最大74.81Mbps(20MHz帯時) |
チャネル幅 |
1.25~20MHz |
変調方式 |
OFDMA:QPSK/16QAM/64QAM |
セル範囲 |
2~10km |
移動性 |
固定、可搬 |
策定時期 |
2004年6月 |
Mobile WiMAXは802.16-2004に移動端末用の修正を加えたIEEE802.16e(802.16e-2005)規格に対応する規格です。最初はハンドオーバーに関する規定は入っておらず、引き続きWiMAXフォーラムで調整されましたが、現在はハンドオーバーの規定も入っています。規格では120km/hの移動速度でもセクター間のハンドオーバーが可能となっています。実際の試験では200km/hでの移動でも支障は生じていません。
※ハンドオーバーとは、基地局の通信エリア(セル)を越えて移動局(車、電車等)が移動し、次の基地局のセルに入ったときに、通信を担当する基地局を切り替える仕組みです。
※IEEE802.16e-2005は世代的には3.9Gの移動通信システムとされています。
※Mobile WiMAX対応ルータは、メーカの規格名が「IEEE802.16e-2005」ではなく、IEEE802.16eとなっています。
モバイル WiMAXの仕様は次の通りです。
モバイルWiMAX |
規格 |
IEEE802.16e-2005 |
周波数帯域 |
6GHz以下 |
最大伝送速度 |
75Mbps(20MHz帯時) |
チャネル幅 |
1.25~20MHz |
変調方式 |
SOFDMA:QPSK/16QAM/64QAM |
セル半径 |
1~3km |
移動性 |
固定、可搬、移動性(時速120kmまで) |
策定時期 |
2005年12月 |
IEEE802.16e-2005の後継規格は2011年3月31日にIEEE802.16mとして規格化され、WiMAX2とも呼ばれています。
※WiMAX2は世代的には4Gの技術とされています。
WiMAX2(IEEE802.16m)が出た後に、LTE(TD-LTE)との互換性を備えたWiMAX2.1が策定されました。WiMAX2.1はWiMAXに対して上位互換であるとともに、LTEとの互換性も目指したことで、将来的にはLTE技術への収束が実現するのではないかとみられます。
※Mobile WiMAXは速度、伝達距離が次世代技術と現行技術の中位であり、市場としてニッチになることが心配されましたが、WiMAX2.1でTD-LTEと互換になることで、市場の将来性が少し明るくなっています。
UQコミュニケーションズの高速モバイル通信サービスです。Mobile WiMAX技術を使ったサービスであり、WiMAXサービスではありません。
モバイルWiMAXで使用できる周波数帯は6GHz帯以下(2.5GHz帯/3.5GHz帯/5.8GHz帯の使用が推奨)ですが、日本では2.5GHz帯を使うことにしました。これを割り当てる段になって4社が使用申請をしましたが、空きの状況からして2社にしか割り当てることができません。総務省は、審査の結果、ウィルコムとUQコミュニケーションズの2社に帯域を割り当てることにしました。
ウィルコムに割り当てられたのは2545MHz~2575MHz、UQコミュニケーションズに割り当てられたのは2595MHz~2625MHzです。ウィルコムは次世代PHSでの使用を予定しており、UQコミュニケーションズはモバイルWiMAXで使用します。従って、現時点でモバイルWiMAXの通信サービスを提供できるのはUQコミュニケーションズだけということになります。
UQコミュニケーションズは、従来のUQ WiMAXの後継サービスとして、WiMAX2.1 Additional Elementsを利用したサービスを「WiMAX2+」のブランド名で導入しています。
UQ WiMAXの接続方式には3つの方式があります。
1つ目 ≪WiMAX対応USB接続データ通信カード≫を挿入して利用する方法
2つ目 ≪WiMAX対応モジュールが搭載されたいわゆるWiMAX PC≫を利用する方法
3つ目 ≪WiMAX対応ルータ≫を使用する方法
Wi-Fi機能を持ったパソコンあるいは、タブレット等からWi-Fiでルータ(WiMAX対応/Wi-Fi対応)に接続し、ルータ経由でWiMAXの基地局との間でIEEE802.16e-2005通信をします。
UQコミュニケーションズは、MNOとして、WiMAX2+の回線を、ヤマダ電機(YAMADA Air Mobile)、ラネット(BIC WiMAX)、ワイヤレスゲート(ワイヤレスゲートWi-Fi+WiMAX)、エディオン、ケーティーコミュニケーションズ(KT
WiMAX)、ピーシーデポコーポレーション、ニフティ(@nifty)、ビッグローブ(biglobe)、ソニーネットワークコミュニケーションズ(so-net)、アサヒネット、ダイワボー情報システム、京セラコミュニケーションシステム、J:COMグループケーブルテレビ局、GMOインターネット(とくとくBB)、リンクライフ(Broad
WiMAX)、ドリームトレインインターネット(DTI)、シンセイコーポレーション(novas WiMAX)、KDDI(au)などのMVNOに開放しています。
現在高速モバイル通信には、HSPA等と、LTE、モバイルWiMAX、AXGAなどがあります。
●HSPA(High Speed Packet Access)
HSPAは3GのW-CDMAを拡張した高速パケット通信の規格です。HSPAのうち、下りを高速化した規格がHSDPA(High Speed Downlink
Packet Access)、上りを高速化した規格がHSUPA(High Speed Uplink Packet Access)です。
HSDPAは、第3世代移動通信システム(3G)に対して、3.5Gに位置付けられています。各社でのサービス名は、ドコモが「FOMAハイスピード」、ソフトバンクが「3Gハイスピード」、旧イーモバイル(現在はY!モバイル)は「EMOBILE
4G」となっています。真の意味での4Gは「
●LTE(Long Term Evolution、長期的進化)
第4世代への橋渡し役(3.9G)として開発された仕様です。最初は「Super 3G」とか「3.9G」などと呼ばれていましたが、その後、「3Gの発展規格を4Gと呼ぶ」ことが許可され、仮の4Gであるはずだった、LTEが4Gと同じ意味に使われるようになってしまいました。国内の通信規格はFDD-LTEが使われています。FDD-LTEは欧米でも次世代通信規格として最もメジャーです。
真の意味での4Gは「LTE-Advanced」です。
※LTE=Long Term Evolution(長期的進化)ですから、「長期的進化を目指す技術」ということでしょうか。4Gだけでなく、5Gもこの延長上で実現できるという自信の表れかもしれません。
●AXGP
AXGPはソフトバンク傘下の通信事業者であるWireless City Planningが採用した次世代通信規格で、TDD-LTEとも呼ばれます。通信は1つの周波数帯を使って時間を切り替えて上下の通信を行うので電波の利用効率が良く、FDD-LTEと比較すると下りの通信速度が速いとされています。
※AXGPはPHSで利用されたXGPという通信規格を改良した規格です。
SoftbankはWireless City PlanningのMVNOとして、Softbank 4Gというブランド名でサービスを提供しています。
※SoftbankはSoftbank 4G LTEというサービスも提供していますので、ややこしくなりますが、AXGPがSoftbank 4Gで、LTEがSoftbank
4G LTEということになります。
MIMOとはMulti-Input Multi-Outputという意味です。MIMO(「マイモ」と呼びます)は、複数入力・複数出力を意味します。MIMOは複数のアンテナを使い、データを送信し、複数のアンテナで受信する技術です。従来のIEEE/a/b/gでは、1つのデータストリームを1つのアンテナを使って流すという方式を使っていました。複数のアンテナを備えたアクセスポイントはありましたが、複数のアンテナがあっても使うのはそのうちのもっとも安定した1本です。
※複数のアンテナで受信した同一の無線信号について、最も受信状態の良いアンテナの信号を利用します。と言っても、小さなアクセスポイントの中に内蔵のアンテナを何本か入れても、ほとんど位置も変わらないし、同じなのではないかと思うかも知れませんが、そうとも言えません。無線電波は波ですので、水面の波と同じように、強め合ったり、打ち消し合ったりします。例えば、建物にぶつかって反射してきたものと、直接届いたものではわずかに位相がずれて、強め合うところと、打ち消し合うところができてしまいます。このような現象を「フェージング」と言います。フェージングによって電波が強め合うところと、弱め合うところの距離は、使っている無線電波の波長と関係します。無線LANで使っているいわゆる2.4GHz帯の電波は波長が120mm位ですので、位置が数十mm違うだけで、電波の強度が大きく違ってきます。
ところがMIMOはデータストリームを複数に分けて、その分けたデータストリームをそれぞれ別のアンテナで送信し、それを異なるアンテナで受信しようとする技術です。従って、2本のアンテナを使えば、通信量は2倍になり、3本使えば通信量は3倍になります。IEEE802.11nでは最大4本まで使えると規定しています。
MIMO対応のアクセスポイントと、MINO対応のワイヤレス端末(クライアント、子機)を使っていれば、通信速度は大幅に向上することになります。IEEE802.11nは、IEEEa/b/gとの互換性を備えていますが、アクセスポイントがMIMO対応で、ワイヤレス端末がIEEE/a/b/g対応の場合はどうでしょうか。このような場合でも、アクセスポイントがMIMO対応になるだけで、パフォーマンスが30%向上するといわれています。
LTE-Advanced(LTEの進化形)は従来のLTEを高速化させたサービスで、技術的な特徴は「キャリアアグリゲーション」と「高速化C-RANアーキテクチャ」です。
「キャリアアグリゲーション」は複数の電波(搬送波、キャリア)を使ってデータを送受信することです。スマートフォンやタブレットは従来は1つの周波数の電波を使ってデータの送受信をしていましたが、キャリアアグリゲーションでは複数の周波数を同時に使う(集計、アグリゲートする)ことで、送受信の効率化、高速化を実現しようとするものです。
「高速化C-RANアーキテクチャ」は基地局の制御を一元的に行う仕組みです。高速化C-RANアーキテクチャでは、広い範囲に電波を届ける広域基地局(マクロセル)のカバーエリア内に、狭域基地局(アドオンセル)をきめ細かく配置して(HetNet、Heterogeneous
Network)、これらの基地局を一元管理します。この方式では、基地局同士の電波干渉を抑えつつ、エリア内の混雑状況に合わせて、基地局の発信する電波を柔軟に制御することが可能となります。混んでいるアドオンセルにピンポイントで電波を届けたり、マイクロセルとアドオンセルのキャリアアグリゲーションを行ったりすることができます。
NTTドコモは通信サービス名「PREMIUM 4G」で2015年3月27日からサービスを開始しています。NTTドコモはLTEサービスのために「800MHz」、「1.5GHz」、「1.7GHz」、「2GHz」という4つの周波数帯を使っていますが、LTE-Advancedのサービス開始時には800MHzと1.7GHzの組み合わせ、1.5GHzと2GHzの組み合わせという形で2つの束にし、受信時の最高通信速度225Mbpsを生み出しています。理論的には3波、4波を重ねることも可能ですので、今後の展開が期待されるところですが、2015年度中には、300Mbps、更に2017年には「4×4MIMO」と「256QAM」を導入することで、受信時の最大速度682Mbpsにまでアップしています。
※682Mbpsは2017年3月9日から提供
※4×4MIMOは基地局と端末がそれぞれ4本のアンテナを使用するMIMOです。ドコモはLTE-Advancedで受信時最大682Mbpsを実現するために、256QAMという手法も取り入れています。QAMは電波の振幅と、位相の両方を使用して変調を行う方式です。
auは三大キャリアの中では最も早くLTE-Advanced(サービス名は「au 4G LTE」)を導入しています(2014年夏)、当初はキャリアアグリゲーションで受信時最大150Mbpsを実現し、2015年の夏からは225Mbpsを提供しています。
ソフトバンクは2016年10月に、256QAMとキャリアアグリゲーション(4×4MIMO)を使ってLTE-Advancedの高速通信サービスの提供を開始すると発表しています。下り最大速度は234Mbpsです。
Mobile WiMAXは802.16-2004にモバイル端末用の修正を加えたIEEE802.16e(802.16e-2005)を元にした規格です。この後継規格がIEEE802.16mで、WiMAX2とも呼ばれています。さらに、このWiMAX2を進化させたのが、WiMAX2+です。WiMAX
2+の下り最大速度は110Mbpsとなっています。更に「キャリアアグリゲーション」、「4×4 MIMO」を使うと、下り最大速度は220Mbpsにまでアップするとされています。
現在「LTE Advanced」と「WIMAX2+」が真の意味の「4G」だと認定されています。
2020年の東京オリンピックを目指して盛んに開発が進められているのが、5Gです。通信速度は現在のLTEの約10倍になることが見込まれています。目指しているのは通信速度だけではありません。大容量化、低コスト、低消費電力、多数の端末接続などの幅広い性能のネットワークが目標とされています。
これらを実現するためには、周波数の利用効率を上げる技術、幅広い周波数帯を有効利用する技術、高密度のスモールセルを効率的に運用する技術などが必要とされています。
更新履歴
2017/2/12 作成
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