Mobile Wi-Fi ルータ


ルータとは

 ルータはコンピュータネットワークを構築するための基本的な機器です。ルータは2つ以上の異なるネットワークに接続し、コンピュータから発信されたデータを異なるネットワークに転送することができます。インターネットではデータの転送に関しる約束事をTCP/IPという規格で定めています。通信手順の決め事はプロトコルと呼ばれます。TCP/IPはインターネットに関するプロトコルをたくさん集めたプロトコル集のようなものですので、通常、TCP/IPプロトコルスイート(Protocol Suite)(Internet Protocol Suite;suiteは一揃いの意味)と言います。従って、インターネット環境でルータと言えば、TCP/IPで決められた約束事に従って、データを宛先まで転送するための装置ということになります。ルータについての詳しい説明はこちらをご覧ください。

CISCOシステムズ社のルータ(Cisco2611)

 ルータネットワークを描く場合は、ルータは通常次のようなアイコンを使って表します。



ルータネットワーク

 インターネットはコンピュータのネットワークを相互に接続したものです。ネットワークを相互に接続する機能を有するのがルータです。ルータはネットワークを接続するための口をいくつか持っています。この口のことをインターフェース(あるいはポート)といいます。

 次の図は、インターネットを概略的に表現したものです。ネットワークを結ぶためのルータのインターフェースは、SnやEnという文字で表しています。Rnで表しているのがルータです。nは数字を表します。色のついた楕円で表しているのがネットワークだと思ってください。ネットワークはNet nという名前を持っています。

 次にルータで構成されたネットワーク図を示します。

 ルータネットワーク

 ルータは複数のネットワークを結びつけています。ここで重要なことは個々のルータのインターフェースは必ず異なったネットワークに所属していることです。同じネットワークに所属しているインターフェースを持ったルータが1つもないことを確認してください。これが、ルータが送信元から宛先までデータを運ぶことができる秘訣です。

 ルータの各インターフェースには識別子が付けられています。これをIPアドレスといいます。IPアドレスは32ビットの数字です。32ビットとは2進数で1と0の並びが32個続くという意味です。ただし、これでは人間には分かりにくいので、8ビットずつの区切りを10進数で表します。そして、各10進数は"."(ドット)で結びつけます。各10進数は8ビットですので、0から255までの数字になります。従って、192.168.20.1のような感じになります。これがIPアドレスです。

 IPアドレスはインターフェースの識別子であると同時にネットワークの識別子でもあります。IPアドレスを使って、ネットワークを表すにはマスクという概念を使います。例えば192.168.20.1/24のようにあらわします。これは32ビットの上位24ビットがネットワークのアドレスを表しているという意味になります。それでは、ネットワークのアドレスは24ビットかというとそうではありません。上位24ビットが有意のビットで、その後には0が続きます。従って、192.168.20.1/24と表した時のネットワークアドレスは、192.168.20.0/24ということになります。

 例えば、Net1のルータR1のインタフェース「S1」と、ルータR2のインターフェース「S1」は同じネットワークに所属していますので、同じネットワークアドレスを持っています。Net1のネットワークアドレスが192.168.20.0/24だとすると、R1のS1のIPアドレスが192.168.20.1、R2のS1のIPアドレスが192.168.20.254というような感じになります。

 送信元のホスト1から宛先のホスト2に向けて送信されるデータはインターネットではパケットとか、IPパケット(正式にはデータグラムといいます)などと呼ばれます。このパケットには宛先のIPアドレスや送信元のIPアドレスが記述されています。


クライアントサーバシステム

 送信元のホスト1(ホストはコンピュータの意味だと思ってください)には様々なプログラムが動いていて、宛先ホスト2でも様々なプログラムが動いています。このプログラムが通信をするのですが、2つのプログラムは全くの無関係なものではありません。今通信をしているホスト1上のプログラムと、ホスト2上のプログラムは互いに通信ができるように最初から作成されたプログラムです。互いに通信ができるように作成されたプログラムはクライアントとサーバと呼ばれるのが普通です。

 皆さんになじみの深いWebの例をとれば、WebクライアントとWebサーバとして機能するように予め設計されています。WebサーバはWebクライアントからの要求に応答するように予め作成されたプログラムです。Webクライアントは、Webサーバに要求を出して、回答をもらうように予め作成されたプログラムです。

 宛先のホスト上には様々なサーバが稼働している可能性があります。そのサーバに対して、要求を出すには宛先ホストのIPアドレスを指定するだけでは足りません。宛先アドレス上で稼働しているサーバを指定するための識別子が必要となります。この識別子のことをポート番号といいます。宛先ホストをIPアドレスで指定し、そのホスト上で稼働しているサーバ(プログラム;もっと正確にいうとプロセス)をポート番号で指定すれば、相手を間違いなく指定することができます。インターネットの通信では、回答をもらう必要がありますので、自分のIPアドレスとポート番号も知らせてやらなくてはなりません。

 つまり、IPアドレスとポート番号の組を指定することでお互いにデータのやり取りをしているのがインターネット通信だということになります。このようにIPアドレスとポート番号の組で接続する関係をソケット接続といいます。また、IPアドレスとポート番号の組み合わせを「ソケット」と呼んだりします。



物理ネットワークと仮想ネットワーク

 ルータネットワークで示した図を見てください。1つ1つの楕円がネットワークを表します。送信元のホストが存在しているようなネットワークは通常LAN(Local Area Network)といいます。一つの施設内のコンピュータネットワーク位の規模のネットワークをLANといいます。

 このLANではイーサネット(Ethernet)というネットワークが運用されているのが一般的です。このように実際に動いているネットワークは物理ネットワークといいます。

 LANよりももっと大規模なネットワークはMAN(Metropolitan Area Network)といいます。更に大規模にしたのがWAN(Wide Area Network)です。MANやWANを構成する物理ネットワークはイーサネットとは異なる物理ネットワークが使われます。

 しかし、送信元ホストのクライアントと、宛先ホスト上のサーバは、その間にどのような物理ネットワークがあるかまったく気にしません。送信元のクライアントと、宛先のサーバで使っているTCP/IPという通信手順は、物理ネットワークが何なのかということに全く頓着しない手順(通信プロトコル)です。このTCP/IPという通信手順では、送信元と宛先のIPアドレスとポート番号を指定して通信を行います。この通信ではパケット(データグラム)というデータのかたまりを使って、送受信が行われます。このパケットには宛先の名札と送り主の名札がついています。名札は何度も言うように、IPアドレスと、ポート番号の組み合わせということになります。インターネットの通信手順であるTCP/IPは物理ネットワークが実際にどのようなものでも機能するように作り上げられています。このような方法をネットワークの仮想化といいます。ネットワークを仮想化して、その上で機能するように設計されたのがTCP/IPです。


LANの物理ネットワーク:イーサネット

 LANの実際のネットワークはイーサネットという手順で動いています。イーサネットでは通信で使うデータのかたまりをフレームといいます。TCP/IPではパケット(データグラム)といいますので、送信元のホストはパケットを作って、ネットワーク上に流すのですが、そのネットワークがイーサネットの場合は、イーサネットがパケットをフレームというものでくるんで、それをネットワーク上に流します。送信元のホストがパケットを作成して、それをネットワークに流すと、イーサネットがフレームで包んでくれると思った人もいるかもしれませんが、実はそうではありません。イーサネットは実はホスト(コンピュータ、パソコン)の中にまで入り込んでいます。イーサネットの心臓部はNIC(Network Interface Card)というインターフェースカード(ボード)であり、、これがパソコンの本体に組み込まれています。ルータのネットワーク図で見るとR1のインターフェースE1や、送信元のコンピュータのE0がイーサネットのインターフェースということになります。

※NIC(ネットワークインターフェースカード)にはイーサネットのケーブルを差し込むための口が付いていて、ここにLANケーブルを指します。この差込口はポートなどと呼ばれます。

 イーサネットの通信手順では、アドレスにはMACアドレスという48ビットの長さの識別子が使用されます。MACアドレスは、NICに割り当てられた識別子です。通常のパソコンには1枚のNICが組み込まれていますので、1つのMACアドレスを持ちます。ルータは通常、複数のインターフェースを持っていますので、そのインターフェースの数だけのそれぞれ異なるMACアドレスを持っています。

 このMACアドレスは通常、16進表示で表されますので、4ビットが1文字(0~9、A~F)で表現されます。0から9までの数字に、その上の10がA、15がFとなります。48ビットは16進表示では、12個の文字列(数字と、ABCDEF)であらわされることになります。

 送信元のコンピュータと宛先のコンピュータがやり取りするためのパケットにはIPアドレスとポート番号が振られていて、このパケットをルータまで届けるときに、パケットをフレームで包むということになります。このような方法をカプセリングといいます。このカプセルには送信元のMACアドレスと、R1のE1のMACアドレスが振られています。

 R1がこのパケットを次のルータに送るときは、R1と次のルータとの間に横たわる物理ネットワークの方式で、フレームが作られるということになります。ルータはルーティングテーブルというデータベースを持っていて、パケットの宛先アドレスを見て、どのインターフェースからパケットを送り出すか判断します。そして、その送り出し口のインターフェースから送信するのですが、その送り出し口のインターフェースは、その送り出し側の物理ネットワークの方式に従ったものとなっていますので(ネットワークの構築時にそのようにするということです)、どのようなフレームで包むかは、そのインターフェースに任せればいいということになります。

 送信元のコンピュータ上のクライアントと、宛先コンピュータのサーバがやり取りするデータが次のように表されるとします。これが、パケットの中身です。実際はさらに複雑ですが、今回は省略して説明しています。

 
 このパケットの中身であるデータに宛先情報などを付け加えます。この情報を追加する部分はヘッダと呼ばれます。パケットヘッダを追加すると、次のようになります。


 これがパケットです。このパケットは送信元のコンピュータから、宛先のコンピュータまで届けられます。このパケットをフレームで包み込むと、次のようになります。

 

 このフレームは、宛先までの経路上にある次のルータにまで運ばれます。スイッチは物理ネットワークの内部に位置するネットワーク機器ですので、フレームをそのまま転送します。


 フレームは1つの物理ネットワークの中をそのまま流れていきます。フレームを受信したルータはフレームヘッダを廃棄し、中からパケットを取り出します。パケットには最終的な宛先のIPアドレスが書かれていますので、次にどのルータにパケットを渡せばいいか分かります。次にパケットを渡すべきルータはネクストホップ(next-hop)と呼ばれます。ルータはネクストホップと、自分の間に横たわる物理ネットワークを見て、どんなフレームヘッダを付けたらいいか判断します。実際には、先ほど説明したように、ネクストホップとつながっているリンクのインターフェースは、予め定められた方式でカプセリングを行うだけです。どのような方式でカプセリングを行うかは、ネットワークを構築する最初の段階で、ネットワーク設計者がネクストホップとの間に横たわる物理ネットワークの種類に合わせて、ルータの送受信口にインターフェースを装着し、それで決定します。このようにして、フレームヘッダは物理ネットワーク毎に新しく付け替えられながら、宛先まで運ばれることになります。


Wi-Fi

 イーサネットは有線LANの規格ですが、無線でLAN接続を実現しようとするのが無線LANという規格です。国際標準はIEEE802.11という規格で定められています。IEEE802.11にはIEEE802.11a、IEEE802.11b、IEEE802.11gなどの様々な規格があります。

 無線LANが商品化された当時は同じメーカの製品でもラインアップが異なる商品間では相互接続が保証されていないということがありました。これではユーザは安心して無線LAN商品を購入することができません。そこで、業界団体が機器の相互接続を確認して、お墨付きを与えることにしました。業界団体は発足後まもなく、Wi-Fi Allianceという名前に改められました。Wi-Fi Allianceは相互接続できる商品をユーザが直ぐに確認できるようにWi-Fi Certifiedというブランドを作り、認定された商品にはWi-Fiロゴの使用を許可しました。つまり、IEEE802.11とWi-Fiの違いは、Wi-Fiのロゴが付いているかいないかということになります。



無線LANアクセスポイント

 次に示すのはLAN内に無線LANアクセスポイントを設置した場合の例です。アクセスポイントは異なるネットワークの境界になるわけではありません。しかし、アクセスポイント配下のノートパソコンがつながるネットワークはWi-Fiで、アクセスポイントとルータの間はイーサネットになっています。従って、ノートパソコンで作成されたパケットは、ノートパソコンのWi-Fiインターフェースで、Wi-Fiヘッダを追加され、アクセスポイントまで無線で送信されます。それを受信したアクセスポイントは、Wi-Fiヘッダを外して、イーサネットのフレームでカプセリングして、ルータに届けます。


 次に示すのはNTTの光回線用の回線終端装置です。この終端装置は、NTTとユーザの責任の分界点を表します。この終端装置には、複数のパソコンや、無線LANアクセスポイントなどを接続するためのインターフェースが備えられています。回線終端装置には複数の端末を接続できますが、一度に通信ができるのは1つの端末だけです。


 皆さんがプロバイダとの間でインターネットの接続契約を結ぶと、終端装置が送られてきます。この終端装置にNTTの局舎から来ている線を接続します。これがWAN側の接続になります。LAN側には、電話用の口や、LAN用の口がいくつかあり、ここに複数台の端末を接続できます。
 終端装置に複数端末を接続しても、一度に通信ができるのは1つの端末のみです。例えば、スマートフォンを使ってWi-Fi経由でデータ通信をしているときは、それ以外のノートパソコンはインターネットにつながりません。


 無線LANのアクセスポイントの装置には有線LANの接続口もいくつか用意されていますので、次のようになっているかも知れません。



 一度に複数の端末をインターネットに接続する場合には、ルータが必要です。次に示すのは、回線終端装置からルータに接続し、ルータとアクセスポイントを接続した場合の例です。


 最近のスマートフォンにはほとんどの場合Wi-Fiの機能が付いています。従って、インターネットの送信元となることができます。ということは、IPアドレスがついているということになります。スマートフォンの設定の「無線とネットワーク」のWi-Fiを見ると、SSID(無線LANのアクセスポイントの識別子名)がいくつか表示されると思いますが、ここを開けてみると、IPアドレスが表示されると思います。

 10.0.0.0~10.255.255.255、172.16.0.0~172.31.255.255、192.168.0.0~192.168.255.255の間のアドレスが使われていると思います。これはプライベートアドレスといいます。プライベートアドレスのままではインターネット接続はできませんので、これをグローバルアドレスに変換する操作を行います。これをNATといいます。上の図の例では、多分ルータにNAT機能が含まれています。


ONUとモデム

 回線終端装置(DCE、Data Circuit-Terminal Equipment)は通信回線と端末を接続するための装置です。通信回線網の終端部分で、家庭やオフィスのLANの接続箇所となります。電話回線を外につなぐ場合の終端装置はモデムと呼ばれます。光回線の場合は、光回線終端装置(ONU、Optical Network Unit)などと呼ばれます。単に終端装置という場合は、この光回線終端装置を指す場合が多いと思います。

 パソコンで処理するデータはデジタルデータと呼ばれます。このデジタルデータがLAN回線を流れています。LAN回線を流れるデジタルデータといってもその信号の方式は様々です。どのような物理ネットワークかで、デジタル信号の方式は違います。内部のLANの信号を外に流す場合には内部で使われている方式を、外で使われている方式に変換する必要があります。外から流れてきた信号を内部ネットワークに流し込む場合も、外の信号方式を内部のLANの方式に変換する必要があります。この信号の方式を変換するのが、終端装置の役割です。外の信号方式が何で、内部が何かで、信号を変換する装置はそれぞれ異なるということになります。

 家庭やオフィスから最寄りのNTTの局舎までは通常アクセス回線といいます。アクセス回線が通常の電話で、内部がイーサネットならば終端装置はモデムといいます。アクセス回線がADSLで内部がイーサネットならば終端装置はADSLモデムです。外が光回線(光ファイバー)で内部がイーサネットなら、終端装置はONUとなります。外がケーブルテレビの回線(同軸ケーブル)ならば、ケーブルモデムを使います。

※最近は少なくなったと思いますが、ISDNならば、TAやDSUなどの終端装置が必要となります。

 外が光回線の場合でも、マンション等の集合住宅では、従来は、マンションの1Fのある場所(例えば管理人室)まで光ファイバーが引き込まれ、そこから先の各部屋までは電話回線を使っていました(NTTの商品名ではBフレッツ)。マンション内の各部屋までは、VDSLという信号方式が使用されました。この場合は、各部屋ではVDSLモデムが使われます。しかし、今は(2008年以来)フレッツ光ネクストというサービスが開始され、マンションのような集合住宅でも各個のモジュラージャックまで光ファイバーが引き込まれていますので、マンションが比較的新しい場合は、多分各個で、ONUを終端装置として使っているのではないかと思います。


無線LANルータ

 アクセスポイントは、スイッチモード(ブリッジモード)とルータモードを切り替えて使うことができるタイプもあります。ルータモードに切り替えると、次のような図で表すことができます。



 LAN内に複数のルータがある場合には注意が必要となります。ルータはネットワークを分割する機能があります。ルータを超えるとネットワークが異なりますので、ネットワークアドレスが異なります。パソコンのIPアドレスを自分で割り振る設定にしている場合は、違うネットワーク(サブネット)にパソコンをつなぐと、そのままではつながりません。この場合には、ルータのインターフェースに割り振られているIPアドレスがいくつになっているか確認し、パソコンのIPアドレスをそれに合わせて変更しなくてはなりません。DHCPサーバが動いている場合は、自動的にIPアドレスを割り振ってくれますので、いいのですが、LAN内に複数のDHCPサーバが動いている場合は、2つのサーバが矛盾したIPアドレスを割り振ってしまう可能性がありますので、これも注意が必要です。家電量販店で売られている一般的なルータ(ブロードバンドルータなどという呼び名で販売)では、デフォルトの設定で、DHCPサーバが動いているのが通常ですので、これもトラブルの原因となります。よく分からない場合は、DHCPサーバを停止させるとか、ルータを1台にしてしまうとかの対策が必要です。

※終端装置はプロバイダからの貸与品ですが、ルータ機能が付いている機種もあります。よく分からない場合にはプロバイダに終端装置にルータ機能が付いているかお尋ねください。



 上の例の場合は、サブネットAには終端装置と接続しているルータ1とルータ2(WLANルータ)の2台のルータがあり、共にDHCPサーバが稼働しています。このような場合は、サブネットA内では、ルータ1の中で動いているDHCPサーバからIPアドレスを割り振ってもらったパソコンと、ルータ2のDHCPサーバにIPアドレスを割り振ってもらったパソコンが混在してしまうことになります。このような場合、パソコンはDHCPアドレス要求に素早く反応したほうのDHCPサーバからIPアドレスを割り振られることになります。このような場合は、同じサブネット内に同一のIPアドレスのパソコンが同居してしまう可能性があります。

 このような場合は、どちらかのDHCPサーバの機能を停止してください。次はルータ1のDHCPサーバを停止した場合の例です。


 次のように設定することも可能ですが、こうするとWLANルータの配下の端末は手動で設定する必要があります。


 両方のDHCPをそのまま動かす場合は、次のようにします。


 ルータを使う場合には対応速度も気にしてください。光回線で1000Mbps(1Gbps)の速度を利用できるとしても、ルータの対応速度が100Mbpsしかない場合は、回線の能力を100%利用できません。ルータを購入する場合には、契約回線の速度以上に対応したルータを購入する必要があります。


Mobile Wi-Fi ルータ

 無線LAN用のルータを持ち運びできるようにした装置がMobile Wi-Fiルータです。ルータには複数のパソコンや携帯などを接続して同時通信ができますので、外部で会議をしたり、展示会を行ったりする場合に便利です。

 ルータに移動性を持たせなくてはなりませんので、ルータの外側の接続も無線通信で実現する必要があります。WAN側の通信回線としては一般的に、Mobile WiMAX、PHS、スマートフォンのLTEなどが利用されます。

 WAN回線を使った通信機能についてはMobile Wi-Fiルータ自身に内蔵している場合と、自身はWAN通信の機能を持たず、WANの通信機能を持つ機器と接続して利用する場合があります。次に示すのはWANの通信機能を内蔵したMobile Wi-Fiルータの例です。


 WAN側への接続機能を内蔵している製品の場合は、ISPが固定されています(ただし、単一の事業者とは限りません)。このため回線契約と抱き合わせで販売されているのが通常です。

※ノートパソコンにWiMAXの無線子機を内蔵している場合や、WiMAX専用の子機を増設している場合は、特にMobile ルータの必要はありませんただし、WiMAX対応のパソコンの場合は、接続できるのはそのパソコンだけです。パソコンだけでなく、タブレットもWiMAXを使いたい、あるいはスマホもWiMAXにつなぎたいという場合は、Mobile ルータが必要となります。

※WiMAXは使用している周波数帯が高いので、電波が障害物を回り込んで進む性質が弱い(電波は、周波数が高くなるほど直進性が強くなります)とされています。建物内で使用する場合は、Mobile Wi-Fiルータだけを窓際において電波をキャッチすることができるのですが、ノートパソコンに内蔵されたWiMAXボードだとこのような使い方は難しくなります。

 次に示すのはWAN側の通信機能がない場合の例です。WAN回線への接続機能を持つ機器に接続して使います。WANの接続機能を持つ機器としては、一般的には携帯電話が利用されます。このような使い方の場合は、メリットがなさそうにも見えますが、Mobile Wi-Fiルータを使う場合はLAN側に10台近くのWi-Fi機器を接続できますので、外部での会議や、展示会会場での利用などで十分利用価値があります。

 
 WAN側への接続機能が付いていない製品の場合は、WAN側での通信を担当する無線WAN機器(通常は携帯)に有線接続しなくてはなりませんが、一般的には、このWAN接続の機能を提供する機器は、Mobile Wi-Fiルータ毎に限定されていますので、ISPも限定されていると考えなくてはなりません。

 Mobile Wi-Fiルータで格安SIMを使うという手もあります。Mobile ルータ用のSIMを契約し、Mobile ルータはSIMフリーのタイプを使います。

 WAN側のWiMAXやLTEは対応エリアがありますので、エリアには注意が必要です。Mobile WiMAXとLTEの両方を使うタイプもあります。また、プロバイダによっては、auの3G回線やソフトバンクの3G回線が使えたりするものもあります。メーカやプロバイダによって異なりますので、購入する際にはよく確認してください。一般的にいって、都市部ではMobile ルータが非常によくつながります。




WiMAX

 無線LAN(Wi-Fi)は免許を必要としない通信方式です。従って、電波があまり遠くまで届いては困ります。無線LANのルータやアクセスポイントは、「免許や登録の必要のない小電力無線局」として扱われます。この免許や登録の必要のない小電力無線局の出力は以前は10mWでしたが、現在は1Wまで範囲が拡大されています(総務省の電波利用ホームページ参照)。しかし、ELECOMのWebページを見ると、この上限の規定は現状では無線LANルータやアクセスポイントには適用されていないようです。

 無線局の出力が上限10mWだとすると、どれくらいまで届くのでしょうか?全く障害物がない状態なら100m位で、障害物があるところでは30m位と考えておいた方がいいかも知れません。建物の中は一概には言えません。木と紙でできた和風の家ならある程度は電波が突き抜けるでしょう。しかし、鉄筋コンクリートだと突き抜けるのはなかなか難しくなります。壁が厚くなると、どれくらい回り込めるかがポイントとなるでしょう。後は無線LANルータやアクセスポイントのアンテナの能力にもよります。

 無線LANルータを持って外に出て、そのまま通信を続けるということを考えると、Mobile Wi-FiルータのWAN接続は、もっと遠くまで届くものでなくてはなりません。そこで、候補となるのがWiMAXです。このWiMAXを移動体から利用できるように改良したのがMobile WiMAXという通信方式です。

※Mobile Wi-FiルータのWAN接続についてはMobile WiMAX、LTE、PHSなどがあります。これらの規格も実際には更に様々な規格に細分化されていますので一概には言えませんが、大雑把に言うと、Mobile WiMAXは基地局までの通信距離が1~3km程度、LTEは10km前後、PHSは500m位というところでしょうか。

 Mobile WiMAXはWiMAXから発展した規格ですので、まず初めにWiMAXについて説明したいと思います。

 WiMAX(Worldwide Interoperability for Microwave Access、ワイマックス)はラストワンマイルをどのようにつなぐかということから始まりました。「ラストワンマイル」とは物理的な1マイルということではなく、通信事業者と利用者を結ぶ通信回線の最後の区間という意味です。通信事業者の最寄りの加入者局から利用者の建物までを結ぶ最後の回線をどのように確保するかは重要な問題です。この部分はアクセス回線と呼ばれ、FTTH(Fiber To The Home)、専用線、CATV(ケーブルテレビの回線)、DSL(Digital Subscriber Line、デジタル加入者線)などで賄われています。

※FTTHは光ファイバーを伝送路として、家庭にまで引き込むアクセス系の光通信ネットワーク構成のことです。DSLにはいくつかの種類がありますが、その中でもADSLがよく利用されています。ADSLは一般のアナログ線(ツイストペアケーブル)を使用して、上り(アップリンク)と下り(ダウンリンク)の速度を非対称(Asymmetric)とした高速デジタル有線通信技術です。

 地方の過疎地や山間部では高速回線なアクセス回線の敷設は困難です。建設が難しいという意味でも困難ですし、莫大な初期費用をかけても、それを後から回収することが難しいという経済的な意味での困難さもあります。しかし、無線を利用することができれば、この問題を解消できるかもしれません。そこで、生まれたのが無線MAN(Wireless MAN、Wireless Metropolitan Area Network)という考え方です。

 無線MANは無線LANのようにセルの範囲が100m以下というのでは役に立ちません。セルの範囲を広げなくてはなりませんので、遠くまで届く周波数を使う必要があります。周波数を高くすると直進性が増し、遠くまで届くようになります。しかし、周波数を高くして直進性を高めると、障害物に弱くなります。従って、高い鉄塔を立てなくてはなりません。

 無線MANの規格化作業はIEEE802.11委員会と、業界団体(チップメーカ/通信機ベンダ/通信事業者)がメンバーとなるWiMAXフォーラムで進められています。

 広帯域無線としては、以前より研究開発されていたLMDS(Local Multipoint Distribution Service)という技術があります。IEEE802.16委員会はこれを標準化して、EEE802.16という規格として策定しました。更に、IEEE802.16ファミリーとして、IEEE802.16a、IEEE802.16dなどの規格が策定されました。そして、これらをまとめる形で2004年6月に、IEEE802.16-2004という規格が策定されています。

 IEEE802.16-2004は物理層と、データリンク層の中のMAC副層だけを規定したものですが、WiMAXフォーラムは物理層とMAC副層についてはそのまま取り込んで、その上でIP層、上位アプリケーション層などの仕様、あるいは異なるベンダー、通信事業者間の相互接続を可能とする規格などを追加しています。このIEEE802.16-2004に上位層の規定や異なる機器同士の相互接続性の規定を追加した規格が「WiMAX」と呼ばれる規格です。この規格はあくまで「ラストワンマイル」を補うためのピースであり、固定無線通信(FWA、Fixed Wireless Access)の規格となります。

WiMAX
規格 IEEE802.16-204
周波数帯域 2GHz~11GHz帯
最大伝送速度 最大74.81Mbps(20MHz帯時)
チャネル幅 1.25~20MHz
変調方式 OFDMA:QPSK/16QAM/64QAM
セル範囲 2~10km
移動性 固定、可搬
策定時期 2004年6月


Mobile WiMAX

 Mobile WiMAXは802.16-2004に移動端末用の修正を加えたIEEE802.16e(802.16e-2005)規格に対応する規格です。最初はハンドオーバーに関する規定は入っておらず、引き続きWiMAXフォーラムで調整されましたが、現在はハンドオーバーの規定も入っています。規格では120km/hの移動速度でもセクター間のハンドオーバーが可能となっています。実際の試験では200km/hでの移動でも支障は生じていません。
 
※ハンドオーバーとは、基地局の通信エリア(セル)を越えて移動局(車、電車等)が移動し、次の基地局のセルに入ったときに、通信を担当する基地局を切り替える仕組みです。違う基地局のセルに入っても、今までの通信の同一性を維持する仕組みが必要となります。インターネットの通信の同一性はIPアドレスとポート番号で維持されていますので、基地局が変わってもこれを維持する仕組みが必要となります。

※固定無線通信の規格であるWiMAXでも、端末は一箇所にとどまらずに移動することができますが、通信が始まると一箇所(少なくとも1つの基地局のセル内)にとどまる必要があります。


※IEEE802.16e-2005は世代的には3.9Gの移動通信システムとされています。
※Mobile WiMAX対応ルータは、メーカの規格名が「IEEE802.16e-2005」ではなく、IEEE802.16eとなっています。

 モバイル WiMAXの仕様は次の通りです。

モバイルWiMAX
規格 IEEE802.16e-2005
周波数帯域 6GHz以下
最大伝送速度 75Mbps(20MHz帯時)
チャネル幅 1.25~20MHz
変調方式 SOFDMA:QPSK/16QAM/64QAM
セル半径 1~3km
移動性 固定、可搬、移動性(時速120kmまで)
策定時期 2005年12月


 IEEE802.16e-2005の後継規格は2011年3月31日にIEEE802.16mとして規格化され、WiMAX2とも呼ばれています。

※WiMAX2は世代的には4Gの技術とされています。

 WiMAX2(IEEE802.16m)が出た後に、LTE(TD-LTE)との互換性を備えたWiMAX2.1が策定されました。WiMAX2.1はWiMAXに対して上位互換であるとともに、LTEとの互換性も目指したことで、将来的にはLTE技術への収束が実現するのではないかとみられます。

※Mobile WiMAXは速度、伝達距離が次世代技術と現行技術の中位であり、市場としてニッチになることが心配されましたが、WiMAX2.1でTD-LTEと互換になることで、市場の将来性が少し明るくなっています。






更新履歴

2017/2/17          作成





















































































































































































































































































































































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