フォニックスの実践(2 e子の前のお母さん)

フォニックス<綴りと発音の関係>

 さー、フォニックスの練習も本格的になってきました。まだアルファベットのフォニックス読みについて読んでいない方はこちらをご覧ください。

 まず、音の基本について説明します。英語の音の基本は音節(syllable=シラブル)です。日本語だとシラブルはsi-ra-bu-ruと4音節になりますが、英語ではsyl-la-bleと3音節になります。日本語のシラブルは母音あるいは「子音+母音」から出来上がっています。英語のシラブルの基本は母音を中心にして前後に子音を置いたものです。

syllableの基本

 日本語の音節は母音(Vowel:ヴォウエル)のみ、あるいは子音(Consonant:カンソナント)+母音から成り立っていますが、英語のシラブル(syllable)の基本要素は、V、CV、VC、CVCです。ここで、Vは母音1つのみのこともありますし、2つ以上並んでいる場合もあります。2つ以上並んでいる場合は、その並びで特別な音を新たに作り上げてしまっている場合があります。こういう場合は、二重母音と言います。これはフォニックス読みの難題です。二重母音の読み方を1つ1つ丁寧に学んで頭に叩き込んでいく必要があります。例えば、houseです。ouは二重母音のときは、/aʊ/(アウ)とよみます。ただ困ったことに、ouはいつも「アウ」ではないんです。二重母音でややこしいのにはeaというのもあります。ここら辺りは後でまた詳しく説明します。母音が連続して並んでいても、1つ1つの母音が音節として独立している場合もあります。こういうのは連母音と言います。例えば、area(ar-e-a:エリア)なんかがその例です。少し長いのになると、situation(sit-u-a-tion:/ˌsɪtʃəˈweɪʃən/シチュゥエイション:状況、境遇、建物などの位置)などがあります。それから子音がいくつか並んでいる場合もあります。spin(スピン)がその例です。子音がいくつか並んでいたらそれをまるで1文字の如くに素早く言ってください。ですから、sとpを素早く言えばいいんです。これは簡単です。split(スピリット)は3つ並んでいます。これはsとpとlを素早く言えば済みます。school(スクール:学校)はどうでしょうか。schoolはsとcとhなのですが、cは母音の「e、i」が後ろに続く時以外は大抵はkの音になりますので、sとkとhの発音を連続的にしかも一文字のように言えばいいということになりますがどうでしょう。いや、ちがう、ちょっと違和感があるという人は正解です。実はschoolの「h」は読んでいません。こういうふうに、途中の文字を読まないという例もあります。それから、schoolには、途中に-oo-という二重母音が隠れています。この部分は/u:/(ウー)となります。ところが子音の連結でも、全く違う音が生み出されてしまうこともあります。例えば、fishです。このshの音は、sの次にhではなく、/ʃ/という1つの音になります。 

子音なのに独立したシラブル?

 シラブルは母音中心と言いましたが、実はそうではない場合もあります。特に「l」のような強い音の子音の前後に更に子音が付いている時は、その固まりで1つの独立したシラブルを形成する場合もあります。たとえば、scrambleなどがその例です。scrambleはシラブルに分けると、scram-bleとなります。cはいわゆる硬いc(ハードc)でkの音になります。scramまでは今までの説明の通りです。bleには母音が付いていません。最後に付いているじゃないかというご意見もごもっともです。ですが、最後のeは読みません(サイレントeと言います)。単語の最後に付いているeは特に、子音+eの形式のときには読みません。これについてはこの後直ぐに説明しますが、とても重要なことなのでよく覚えておいてください。じゃー、なくてもいいの?という疑問も当然出てくると思いますが、読まないんだけど大切は役割があります。で、-bleの続きですが、このように子音だけの塊でも、一つの独立したシラブルになることがあります。tackleはシラブルに分けるとtack-le(ラグビーなどのタックル)となります。この手のものをいくつか挙げておきます。 

 flex-i-ble、bi-cy-cle、nee-dle、gig-gle、gen-tle、ap-ple、en-er-gy、gyp-syなどです。「l」は子音の割に強い音です。それから、語尾に来る「y」は母音の「i」と同じで。「i」のアルファベット読みになります。

シラブル毎に覚えて行こう

 単純なシラブルから学んでいきましょう。基本はCVCですね。ここから段々と広げていきましょう。Cは子音1つ、Vは母音1つの所から始めた方が分かりやすいので、そのようにしたいと思います。

 いよいよ今日の本題に入ります。

e子の前のお母さんはアルファベット読み

 matなら今まで説明したとおりです。mとaとtのフェニックス読みを並べればOKです。matは/mæt/(マァーット)となります(カタカナ読みはとりあえず付けているだけですのでできるだけ早く卒業してください)。matの語尾に「e」を追加すると、mateは/meɪt/となります。aを/eɪ/とアルファベット読みにしているんです。つまり、最後がeで終わっていて、その前に子音がある場合は、その子音の前の母音はアルファベット読みにしなさいということです。これが、「e子の前のお母さんはアルファベット読み」というルールの意味です。hatとhateも同じように考えてください。hatは/hæt/(ハァーット:つばのある帽子)とhateは/heɪt/(ヘイト:ひどく嫌う)です。

 eはPeteとpetですね。Pete(ピート)は男の子の名前、pet(ペット)はもう説明の必要はないでしょう。iの例は、pineとpinです。pineは/paɪn/(パイン:松)、pinは/pɪn/(ピン)です。次は、oの例です。noteは/noʊt/(ノォウト)で、notは/nɑt/(ナァート)あるいは/nɑ:t/です。「:」は音を伸ばす記号だと思ってください。伸ばすか伸ばさないかはご自分の好み、その場の気分で使い分けてください。uの例はcuteとcutです。何度も言いますが、cの後ろに「a、o、u」が続くとcはkの音になります。したがって、cuteは/kju:t/(キィユート:かわいい)となります。発音記号の/j/は「j」の音ではなく、「y」の音ですのくれぐれもお間違えの無いようにお願いいたします。cutは/kʌt/(カット:切る)です。

 今回は子音+母音+子音で、子音、母音とも1文字の例を挙げました。でも、こういう例はあまり多くはありません。前の子音が複数とか、後ろの子音が複数なんていうのが一般的です。例えば、spendなどは、spとndのように、2つの子音を1つの音のように一度に言うタイプの子音ブレンド(blend:混合する)が2つ付いています。ただし、子音が2つ以上集まって全く違う音を作り出してしまうものもあります(digraph:2字1音、二重字)ので、注意してください。それから、間に入っている母音が複数で二重母音になっているのも別に考えることにしましょう。

e子の前のお母さんの規則には例外がある

 「e子の前のお母さんはアルファベット読み」というルールには実はたくさん例外がありまして、しかもこの例外が中学生で初めて英語を勉強する段階で、これでもかこれでもかという感じで出てきます。中学生の低学年で学ぶ英語は基本語ですので、ネイティブ(生まれながらの英語話者)も何度も何度も使っているうちに発音がいい加減になってしまったのでしょうね。

 ただし、お母さんが教える英語では注意が必要です。学校の先生は権威がありますから、どんな風に教えようが生徒は一応納得するのですが、お母さんが「e子の前のお母さんはアルファベット読みよ」と教えた途端に学校で学ぶ教科書に例外がゴロゴロ出て来るのでは信用問題です。この辺りのところは、教える前によくよく説明して、納得させておいてください。どんな言語でも例外はつきものです。例えば、と言って日本語の例を出してもいいかもしれませんね。例えば、菅原道真さんの話をして、「東風」は何て読むか知っているかなんて話をしてもいいかも知れません。

 前置きが長くなりましたが、それでは「e子の前のお母さんはアルファベット読み」のルールの例外の具体例です。例外が多いのが特に「-ve」で終わっている英単語です。中学に入っていきなり大物が出現します。have(ハヴ:所有している)です。このhaveはルールの上からは、aを/eɪ/(エイ:aのアルファベット読み)と読むはずですが、フォニックス読み(母音のフォニックス読みは日本の学校では短母音と言っていますので覚えておいてください)して、/æ/(eの口の形から、大きく口を開けてaの状態まで素早く移動しながら発音します。ェアのような感じに)となりますので、/hæv/となります。要するに、語尾に「e」が付いていない時の発音です。同じように発音する単語に、give(ギヴ:与える)、live(リヴ:生きる)、love(ラヴ:愛する)などがあります。これらも、困ったことに英語を習いたての時に出てきます。それから、もう少し学年が上がるとprove(プルーヴ:証明する)という英単語が出てきます。これは、語尾の「e」を取った時の読みではなく、「o」の部分を「u」のアルファベット読みで読んで、prove(/pru:v/:プルーヴ:証明する)となります。それから他の単語に付加して形容詞を作る-ive(接尾辞)(-tive、-siveなど)があります。これに関しては、電子辞書で「~ive」で検索したところ、1000を超えますので1000だけ表示しますというメッセージが出てしまいました。例えば、activeです。これは、音節に分けるとac-tiveとなり、acは/æk/(アック:cが「k」の読みになっています)、tive(/tɪv/:タイブではなく、ティブ)となり、2つの音節をくっつけて/æktɪv/となります。

 ただし、このタイプでもalive(アライヴ:生きている)、wave(ウェイヴ:波)などのようにルール通りのものもあります。

 それから、これは蛇足ですがproveの名詞形はproofで、母音の部分が-oo-と二重母音となっていて、この部分を「ウー」/u:/と読んでいますので、この名詞形との関係で、proveの読みも変化してしまったものと思われます。

 comeなどのように-ve以外でも例外があります。それから、中学生の頭を混乱させるのが、giveは例外ですが、giveの過去形であるgaveは/geɪv/(ゲイヴ)とルール通りに読みますし、comeの過去形のcameもルール通りにcame(/keɪm/:ケイム)となります。

 お子さんにこのような話をすると、「だから1つ1つ覚えればいいんでしょう。簡単よこんなの。」と言うことでしょうね。優秀なお子さんほどこう言います。でも、これではだめなんです。ここで英単語は1つ1つ発音を覚えるしかないんだとお子さんが心に決めてしまったら、お母さんの負け、ひいてはお子さんの負けです。これまで何億人もの日本人英語学習者が矢折れ、心が尽きて、英語学習の道から敗れ去っていった同じ轍を踏むことになります。覚えなくてはならない英単語が100個や200個位ならこれでもいいでしょう。でも、これから、1万5千から、2万5千語の英単語を覚えていかなくてはなりません。落穂拾いのようなことをしていたんではとても勝ち目はないと思ってください。

 次は、「子音が連続した場合のフォニックスルール」です。

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