幼稚園から自分の子供に英語を教えようという場合は、ぜひ英語カードを作ってください。もちろんお母さんが作ります。お子さん自身が英語カードを作るというのは無理な話です。
初めに作るのはフォニックスカードがいいと思います。最近は小学生用の英語の学習参考書などが出版されていて、そこに小学生向けの英単語がたくさん掲載されているので、そういうのを参考にしてという考えもあると思いますが、私は最初にフォニックス用のカードを作成して、小学校で英語の授業が始まるまでにフォニックスのルールを全部頭に入れてしまうのが、得策だと考えています。そうすれば、その後の英語の勉強に計り知れないほどの好影響を与えると思っています。
英単語はどうして覚えられないの?
英語の勉強で英単語を覚えることは非常に重要な位置を占めています。ところが英単語を覚えるのは思いのほか困難を伴います。覚えても覚えても直ぐに忘れてしまいます。初めて出会った英単語については単語帳に記録し、何度も何度も記憶しようと試みますが、うまくいきません。テストの前の晩に覚えて次の日のテストには何とか対応できるのですが、1週間もすると元も子もありません。全然勉強していない英単語と、いったん覚えたはずの英単語が全く同じなんです。
私が中学生の時は書いて覚えなさいと言われました。important(/ɪmpɔˈ:rtənt/:インポータント:重要な)を覚えるのに紙に綴りを100回書いた覚えがあります。それでも、効果はあまりありませんでした。2、3週間もすればほとんど記憶には残骸すら残っていません。100回、紙(当時はわら半紙でした)に書いたことは何とか記憶しているのですが、それに筆圧の掛け過ぎで指が痛くなったことは覚えているのですが、その時に書いた英単語が何だったかは覚えていません。ましてや正確な綴りなんてとても覚えられなかったのです。もちろん他の英単語の場合も同じです。
英単語は日本語の単語に比較すると格段に記憶に残りにくい気がします。この辺りのことは素人なのではっきりしたことは言えないのですが、ディクレシア(読み書き障害)の研究をなさっている宮崎圭佑先生のWebサイトを拝見すると、文字と音との関係が希薄であることが関係しているようです。例えば、英語のネイティブであればimportantという単語を見れば、それを口に出して言わなくても脳の中でimportantの音が響き、そのことで記憶が強められるようです。その時に意味と綴りを覚えれば、綴りと、音と、意味が一体化して脳に焼き付きます。日本人の英語学習者は、importantという綴りを見ても、その音が脳の中に響かないのでいつまでたってもimportantという単語が記憶として定着しないのではないかと思います。
綴りと音の関係が英米人と同じような感覚で分かっていると、英米人と同程度に英単語を記憶できるのではないかと思います。また、英単語にイメージが付いているともっと記憶しやすくなります。英単語はフォニックス式で音と綴りの関係を明確にしてあげることが肝心です。英単語の読みに関して自信がない時は脳が自衛動作として、記憶を拒否しているのかもしれません。間違った覚え方をすると後でしくじることになるので、覚えないように脳が防衛本能を発揮しているような気がします。これは私の全くの思い込みで学術的な論文等で確認したものではないので、ご承知おきください。
それから、英単語にはイメージが付いていればもっと記憶効率が良くなるはずです。
英単語を覚えるには書いて覚えるよりもカードで覚える方がいいと思います。英単語の記憶を長く定着させるには忘れる直前にもう一度復習することが大切です。ドイツの心理学者のエビングハウスという人は長期記憶の研究をして、「エビングハウスの忘却曲線」という考え方を発表しています。それによると人間は覚えたことを直ぐに忘れてしまう。でも、忘れる前に復習すると、最初に記憶した時よりも短時間で記憶を再構築することができる。そして、これを繰り返せば繰り返すほど、忘れるまでの時間が伸びて、最終的にはずっと記憶を維持することができるという理論です。どうもこれは確かなようです。とすれば、忘れる前に復習することが大切で、これを繰り返すことが重要だということになります。
英単語を覚えるには受験生がよく利用する英単語集を使うという手があります。しかし、これはなかなか大変です。大学受験までには大体5000語程度覚えなくてはなりません。難関大学だと7000語とか8000語などと言われます。しかも、これではまだまだ足りず、英語でネイティブと対等にやりあうためには15,000語から25,000語程度などと言われます。
単語集では、一回りするのに、半年くらい経ってしまいます。そうすると、半年後には何の記憶も残っていません。これでは単語集を何度回しても一向に単語力は増えてきません。エビングハウスの実験では、20分後には58%しか記憶が残っていないと言っています。つまり、20分で42%忘れてしまうということです。1日後に残っているのは26%です。1か月後には21%しか残りません。ですから、英単語長はできるだけ早く回転させなくてはなりません。英単語の記憶の鍵は回転率だったのです。ですから、英単語の綴りを100回繰り返すなんて言うのは全くの非科学的な無駄な努力だったのです。1に回転、2に回転だったのです。できるだけ回転効率を上げるためには、既に覚えた単語はどんどん除外しておくことです。英単語帳はこれが出来ません。英単語の練習をしていると、英単語によってすごく覚え易いのと、覚えにくいのがあります。例えば、似たようなつづりで意味が全く違うものとか、発音が似通っているが綴りも意味も違っているなどというのがあります。また、その人その人との相性もあるかもしれません。なんとなく好きな英単語もあります。音とか、意味とか、綴りなどがなんとなくいい感じなんですね。そういうのは直ぐに覚えてしまいます。英単語カードを利用して英単語の練習をする時は、かならず「完全に覚えたもの」、「なんとなくうろ覚えなもの」、「よく覚えきれないもの」、「他のものと混乱しているもの、「全く記憶にないもの」などに分けて、それぞれで繰り返しの期間などを考えてください。よく覚えられないものほど、短期間にしかも回数を重ねる必要があります。
カード作りでの注意
小学校の3、4年生までに中学校で必修の英単語は全部覚えましょう、というか、あなたのお子さんには覚えていただきましょう。そのためはカードの枚数は1400枚程度になります(私が実際に作ってみたフォニックスカードは1424枚です)。これを手作りするわけですが、手書きで作るのは大変です。試しに100枚程度作ってみればいかに大変かが分かると思います。
カード作りにはWordを使ってください。A4の紙で両面印刷して、A6の大きさのカードを作る場合は表と裏のカードの関係は次のようになります。
うっかり間違えて作ると、A6に切った時に、表の単語の綴りと、裏の説明がずれてしまいますので注意して下さい。A4の大きさで後で4つ切りにしてカードを作るときは、レイアウトのページ設定で、「段組みを2段」にセットするといいと思います。この時には、余白は上下左右全部「0」にセットしましょう。こうしないと、文字の位置をセンターの設定にしても、左右どちらかにずれてしまいます。
あるいは、Wordのページ設定で「サイズ」をA6の設定にして、最初に紙をA6に切って印刷するという手もあると思うのですが、Wordの設定では、A5しか設定が出来ません。ハガキ大にセットすることはできますので、はがき大で元データを作るという手もあります。A6(111×154)と「はがき大」(106×154)はほとんど同じです。
どんな英単語を覚えるかですが、中学で勉強する英単語を覚えます。Googleなどで、お住まいの地域の教育委員会で採用している中学英語の教科書を検索してください。そうすると、どの教科書を採用しているかか分かりますので、Amazon等で取り寄せます。自分の子供が中学に進学するころには教科書採用が変わってしまうかもしれないなんていう心配は無用です。どの教科書でも大体採用されている英単語は同じですので、
さー、カード作りを始めよう
中学1年から3年生までの教科書から英単語を選択します。どんな順にカードを作っていくかは、フォニックスの実践の<1>、<2>、<3>、<4>、<5>に書いておきましたので、それに沿って選んでいってください。目次ごとに1つのファイルという感じで作っていくといいと思います。
カードの表には英語の綴りと画像を
どんな英単語を選べばいいかは大体の目安が付いたと思います。次は、英語カードの表です。選んだ英単語を書いてください。文字はできるだけ大きめにしてください(フォントの大きさは36ポイントか28ポイント位)。フォントは、「Times New Roman」がお薦めです。形の良いアルファベットの文字が書けます。気に入らなければ、「Arial」辺りはどうでしょうか?表側には絵を入れるといいと思います。Googleで検索すると著作権フリーの画像が見つかりますので、それを張り付けてください。この画像を選ぶ作業は結構時間がかかりますが、画像があるとないとではお子さんの記憶に定着する率が大きく変わってきますので、やっかいでも頑張って画像を入れましょう。この画像は、この先何百回とお子さんの目に触れるものですので、精神衛生上よろしくないと思われるものは避けなくてはなりません。
画像の使い方
表側に画像を入れるには、その単語をGoogleで検索してください。例えば、「authentic」というカードを作りたいときは、Google検索で「authentic」を検索して、「画像」をクリックすると、Googleが見つけてきたauthenticの画像が表示されますので最適なものを1つ選んでください。お子さんの気持ちになって選んでください。見つかったら、キーボードの「Print Screen」のキーを押します。これで、画像がキャプチャされました。キャプチャされたのはディスプレイの画面ですので、この画面の画像から、適当な部分を切り出す必要があります。この時にはJtrimなどのツールを使うといいでしょう(フリーですので、Googleで検索して、ご自分のパソコンにインストールしておきましょう)。Jtrimを起動して、編集の「貼り付け」を選択すると、先ほどPrint Screenした画像が映し出されます。この中から適当なものを選んでください。マウスを近づけると、正方形のマークが出ますので、その正方形で、切り出す画像を囲います。画像の選択が出来たら、「編集」の「切り取り」をクリックします。これで、切り出したい部分だけがキャプチャできましたので、Wordのファイルに戻ります。Wordのファイルの中の画像を張り付けたいところにマウスのカーソルを当てて、右クリックして「貼り付けオプション」で貼り付けをします。その後、マウスで画像を右クリックしてアクティブにして、「文字列の折り返し」で、「内部」や「前面」などご自分の好きなものを選択して、Wordのページの中での位置を決めて下さい。
裏側は、音節の形式;発音記号;カタカナ読み;日本語訳
さて裏側です。選択する単語は単音節のものが望ましいのですが、2つ以上の音節に分解できるときは音節ごとにハイフォンでつないでください(例:in-for-ma-tion)。それから、発音記号で、発音を記入しましょう(例:/ɪnfəˈrmeɪʃən/)。それから、発音記号の読み方をカタカナで書いておきます(インフォーメイション)。各文字の読み方は、フォニックスの実践<1 アルファベットの読み>を参考にしてください。
発音記号のフォントをインストールしよう
発音記号を身につけることは必須だと思ってください。発音記号をWordの文章に書き入れるときは、Aglaia Phonetic Symbolがお薦めです。Googleで検索してインストールしてください(フリーです)。Aglaia Phonetic Symbolをインストールすると、Wordのフォントボックスで、Aglaia Phonetic Symbolを選択することができます。発音記号を入れるときは、フォントをAglaia Phonetic Symbolにセットします。どのキーにどの発音記号が割り当てられているかは、テキストのファイルをご覧ください。Aglaia Phonetic Symbolをインストールするとこの発音記号のキーの割り当て表(キャラクターコード表)が一緒についてきますので、これをプリントアウトして、これを見ながらキー入力すると便利です。この表を見ると、大文字のTに/θ/が割り当てられていることが分かります。と言っても、発音記号を英単語毎に入れていくのは結構大変です。でも、お子さんのためですのでめげずに頑張りましょう。
発音記号については、辞書によって少しずつ特徴があります。特に顕著なのが、母音と「r」が絡んだ時の発音記号がさまざまあることです。これについては、厄介です。先ほど紹介した、Aglaia Phonetic Symbolだと、母音と「r」の絡みのところで特殊は発音記号を使っていますので、Webでは表示できません。この記号は、大修館のジーニアスという有名な辞書でも採用していますので、これを使ってもいいかもしれません。一般的には国際音声学会(IPA)の定めたものを採用しているものが多いようです。これだと母音の音と「r」の発音記号を並べているだけですので使いやすいと思います。
日本語訳はコア(中核的な意味)で
次に英単語の日本語訳を入れていきます。高校生以上で勉強する難しい単語は英語と日本語で1対1対応している語が多いのですが、基本的な英単語になればなるほど、たくさんの意味が出てきます。基本的な英単語になると日本語訳が20個位ずらっと出てきます。これを全部カードに書き入れていくとお子さんの頭はパニックになるのでできるだけ基本の意味だけに絞ってください。最近は英単語の中核的な(コア:core)意味をマスターしようという動きも出てきています。これは非常にいいことだと思います。英語の辞書を買う時にはコア(Core)英語とか「E-Gate」などと書いてあるのを求めるといいと思います。この手の辞書だと「go」は「視点のある所から離れていく」とか、「come」だと「視点のある所に移動する」動きなどと書かれていて、頭の中がすっきり整理されます。
カードにはヘッダを入れよう
カードには1枚1枚ヘッダを入れましょう。A4で作成して、後でカッターで4分割する予定なら、ヘッダーとフッターにファイル名を書いていきましょう。例えば、アルファベットの読みを勉強するためのカードなら、ファイル名はphonics-001-pbなどとします。pbは口の形が同じで声帯を震わせるか震わせないかの違いなので「b」「p」の関するカードをまとめて作ったためです。これは必須です。何故かというと、フォニックスの英語カードは自分の記憶の状態などの関係でしょっちゅうグループ化して、そのグループをまたシャッフルするということを頻繁に行うので、後でまた同じ仲間のカードをまとめることができるように何らかの目安を作っておく必要があるからです。
抜けがないようにカードを作るには同じ種類のもの同士を同じファイルにまとめて作ることが大切です。私が作ったファイルの例をこちらに示します。参考にしてください。各ファイルには20から40位を目安にしてカードを作ってください。作ろうとすればいくらでもできますが、余り欲張ると中学生の範囲を超えてしまいます。私は、中学生から、高校1年生位までの学習範囲の英単語で出来るだけ1つの音節の英単語を選んだ方がいいと思いますが、単音節にこだわると意外に難しいです。単音節にこだわったために、おかしな英単語(受験などに関係なさそうで、ネイティブもあまり使わないような)を選ぶよりも、時には2音節、3音節のものでも、フォニックスの勉強になり、後々の受験勉強にも役に立つものを選択した方がいいと思います。1つの種類で、少なくてもカードは10枚位を作るように目標にしてください。あまり少ないと、練習効果が少なくなります。
ご自分でデータを作るのが大変という方は、ぜひ次のデータをご利用いただきますようにお願いします。以下は有料とさせていただいております。ポストカードの大きさの方はノートパソコンやiPADに入れて利用することを想定していますが、A6のカード用紙に両面印刷することもできます(長辺綴じの設定)。A6用のデータの方はプリンターで打ち出して(長辺綴じの両面印刷で)カットすることを想定しています。
- フォニックスカード:A6用のデータ(カード1424枚分)
- フォニックスカード:ポストカードの大きさ(カード1424枚分)